2025-10-15 有印私文書偽造の時効は5年?成立要件と事例を弁護士が解説
作成日:2025年10月15日
「昔、書いてしまった契約書、もしかして犯罪に…?」と、過去の行為に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。有印私文書偽造罪の時効について、結論から言うと公訴時効は5年です。犯罪行為が終わった時からこの期間を過ぎれば、原則として検察官は起訴(裁判にかけること)ができなくなります。
しかし、時効の計算は単純ではありません。この記事では、有印私文書偽造罪がどのような場合に成立するのか、時効はいつから数え始めるのか、そして万が一の時の対処法まで、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。
有印私文書偽造罪とは?基本を理解しよう
有印私文書偽造罪と聞くと難しく感じるかもしれませんが、これは私たちの社会を支える「書類の信頼性」を守るための大切な法律です。
具体的にどのような行為が罪に問われ、どんな罰則があるのでしょうか。まずは基本から確認していきましょう。
罪が成立するための3つの条件
実は、単に他人の名前で書類を作っただけでは、この罪は成立しません。法律(刑法)上、次の3つの条件がすべて揃う必要があります。
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
(出典:e-Gov法令検索 刑法第百五十九条)
この条文を、身近な言葉で分解してみましょう。
- 1. 「行使する目的」があること
作成した偽の書類を、本物であるかのように誰かに見せたり、提出したりするつもりがある場合です。「使うつもり」がなければ罪にはなりません。 - 2. 他人の印鑑や署名を無断で使うこと
本人の許可なく、他人の名前でサインをしたり、印鑑を押したりする行為そのものです。 - 3. 「権利、義務、事実証明」に関する書類であること
契約書や借用書(権利・義務)はもちろん、履歴書や在職証明書(事実証明)といった、社会生活で重要な意味を持つ書類が対象です。
【具体例】友人になりすまして消費者金融の申込書にサインする
この場合、「お金を借りる(行使する)目的」で、「友人(他人)の署名」を使い、「契約書(権利・義務に関する書類)」を作成しているため、3つの条件をすべて満たし、罪が成立する可能性が非常に高いと言えます。
刑罰と公文書偽造との違い
もし有印私文書偽造罪で有罪判決を受けると、3か月以上5年以下の拘禁刑が科されます。
似た犯罪に「公文書偽造罪」(例:免許証の偽造)がありますが、役所が発行する公文書のほうが社会的な信用度が高いため、私文書偽造よりも重い罪(1年以上10年以下の拘禁刑)と定められています。
有印私文書偽造罪の要点まとめ
| 項目 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 成立要件 |
①行使の目的があること ②他人の印章・署名を無断で使用すること ③権利・義務・事実証明に関する文書であること |
刑法第159条1項 |
| 刑罰 | 3か月以上5年以下の拘禁刑 | 刑法第159条1項 |
| 公訴時効 | 5年(犯罪行為が終わった時から起算) | 刑事訴訟法第250条2項5号 |
このように、成立要件から刑罰、時効まで法律で明確に定められています。もし「自分のケースは罪にあたるのか」「時効は成立しているのか」とご自身の状況に不安を感じる場合は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
P4 MARKETのようなプラットフォームでは、匿名で弁護士にオンライン相談が可能です。一人で悩まず、まずは専門家の見解を聞いてみましょう。
時効のカウントはいつから始まる?「起算点」と「停止」を解説
有印私文書偽造の時効が5年だとわかっても、「では、その5年はいつから数え始めるのか?」という点が重要です。このスタート地点を法律用語で「起算点(きさんてん)」と呼びます。
時効の起算点は「偽造した文書が完成した時」
公訴時効は「犯罪行為が終わった時」からカウントが始まります。有印私文書偽造罪の場合、この「犯罪行為が終わった時」とは、偽造した文書が完成した瞬間を指します。
つまり、他人の印鑑やサインを使い、書類としての体裁が整ったその時に、時効の5年間のカウントダウンがスタートするのです。
【具体例】2020年4月1日に借用書を偽造した場合
時効のカウントはその日から始まり、原則として5年後の2025年3月31日が経過した時点で時効が成立します。これにより、検察官は起訴できなくなります。
時効のカウントが止まる「時効の停止」に注意
ただし、例外として時効の進行が一時的にストップする「時効の停止」という制度があります。刑事訴訟法第255条1項では、以下のようなケースが定められています。
- 犯人が国外にいる場合
- 犯人が逃げ隠れていて、起訴状の送達などが有効にできない場合
例えば、文書を偽造した犯人が3年間海外にいた場合、その3年間は時効のカウントが止まります。日本に帰国した時点から、残りの期間のカウントが再開される仕組みです。単純に「海外に5年いれば時効が成立する」わけではないため、注意が必要です。
民事と違う!刑事時効に「更新(中断)」はない
借金の返済期限など民事事件の時効には、裁判を起こすことで時効期間がリセットされる「時効の更新(旧:中断)」という制度があります。
しかし、刑事事件の公訴時効には、このような更新や中断の制度は一切ありません。一度スタートした時効は、「時効の停止」事由に該当しない限り、5年間ゴールに向かって進み続けます。
時効の起算点や停止の判断は、法的な知識がないと難しい場合があります。ご自身の状況で時効が成立しているか不安な場合は、自己判断せず、必ず弁護士に相談しましょう。
P4 MARKETなどのプラットフォームを利用すれば、匿名で気軽に専門家を探し、法的なアドバイスを求めることができます。
【身近な事例】こんな行為も有印私文書偽造罪に?
有印私文書偽造罪は、決して遠い世界の犯罪ではありません。「これくらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちが、思わぬ形で犯罪に該当してしまうケースは少なくないのです。
ここでは、私たちの身の回りで起こりうる3つの具体例を見ていきましょう。
事例1:親の署名を真似て学校の欠席届を提出する
学生が、親に内緒で学校を休むため、欠席届の保護者欄に親のサインを真似て書いて提出する。これも、実は有印私文書偽造罪にあたる可能性があります。
- 行使の目的:学校に提出し、「親が欠席を了承した」と信じさせる目的がある。
- 作成者と名義人の不一致:サインした子どもと、名義人である親は別人。
- 事実証明に関する文書:欠席届は、「保護者がその事実を確認・承認した」という事実を証明する文書とみなされる。
もちろん、子どもの行為がすべて刑事事件になるわけではありません。しかし、法律上は犯罪の構成要件を満たしうるという認識は重要です。
事例2:退職した会社の在職証明書を偽造して転職活動に使う
転職を有利に進めたい一心で、以前勤めていた会社名で、経歴や役職を偽った在職証明書をパソコンで作成し、会社の印鑑まで偽造して押してしまう。
- 行使の目的:転職先の会社に提出して、経歴を良く見せる目的がある。
- 作成者と名義人の不一致:作成者(本人)と、証明書の発行名義人(元の会社)は別人。
- 事実証明に関する文書:在職証明書は、職務経歴という社会的な事実を証明する文書。
この偽造書類で採用が決まっても、後に経歴詐称が発覚すれば懲戒解雇は免れず、社会的な信用をすべて失うことになります。
事例3:他人になりすまして消費者金融の申込書を作成する
友人や知人の名前・住所を無断で使い、消費者金融のローン申込書を作成し、署名・捺印までする。これは非常に典型的なケースです。
- 行使の目的:「融資を受ける」という明確な目的がある。
- 作成者と名義人の不一致:作成者と、なりすまされた友人は別人。
- 権利・義務に関する文書:ローン申込書は、金銭の貸し借りという権利・義務を生じさせるための書類。
3つの条件がすべて揃っており、申込書を作成した時点で有印私文書偽造罪が成立します。さらに、その書類を使ってお金を借りれば、別途詐欺罪にも問われます。
これらの事例のように、有印私文書偽造は決して他人事ではありません。過去の行為について、「時効は成立しているのか」「今から罪に問われるのか」と深刻な不安を抱えているなら、どうか一人で悩まずに、法律の専門家へ相談��てください。
万が一逮捕されたら?その後の流れと弁護士の役割
もし有印私文書偽造の疑いで逮捕されてしまったら、刑事手続きはスピーディーに進みます。その後の流れを理解しておくことが重要です。
逮捕後の72時間が運命を分ける
逮捕されると、まず警察で取り調べを受けます。その後、手続きは以下のように進みます。
- 逮捕から48時間以内:警察は、身柄と事件資料を検察官に送致(引き継ぎ)します。
- 送致から24時間以内:検察官は、引き続き身柄を拘束する「勾留」を裁判所に請求するか、釈放するかを判断します。
この逮捕後最大72時間が、その後の処遇を大きく左右する極めて重要な時間です。
もし裁判所が勾留を認めると、原則10日間(延長されると最長20日間)、身柄拘束が続く可能性があります。検察官はこの期間中に捜査を終え、起訴(裁判にかける)か不起訴(事件終了)かを最終的に決定します。
不起訴処分を勝ち取ることが重要
不起訴になれば、前科がつくことなく、事件はそこで終了します。そのため、逮捕直後からの弁護活動は、この不起訴処分を目指すことが最大の目標となります。
なぜ、一刻も早く弁護士に相談すべきか
逮捕直後は、家族とも自由に連絡が取れず、孤立した状況に置かれます。そんな中で唯一、あなたの味方となり、法的なサポートができるのが弁護士です。
早期に弁護士に依頼するメリットは数多くあります。
- 被害者との示談交渉
被害者がいる場合、弁護士が代理人となって迅速に示談交渉を進めます。示談の成立は、不起訴の判断や刑の軽減に非常に有利に働きます。 - 有利な証拠の収集
アリバイや、悪意がなかったことを示す証拠などを弁護士が収集し、捜査機関に提出します。客観的な証拠は、あなたの主張の説得力を高めます。 - 捜査機関への法的な働きかけ
「勾留は不要である」といった意見書を提出したり、法的な観点から不起訴が妥当であると主張したりすることで、不当な身柄拘束や起訴を防ぎます。
有印私文書偽造罪に限定した統計は少ないですが、専門家は検察統計に見る被疑事件の処理状況といった政府の公的データも参考にしながら、最善の弁護方針を立てます。
突然の逮捕でパニックになっても、専門家がついていれば冷静に対処できます。P4 MARKETのようなサイトで、いざという時に相談できる弁護士を探しておくことも有効です。
有印私文書偽造の時効に関するQ&A
最後に、有印私文書偽造の時効についてよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 偽造した書類を後日使ったら、時効の起算点は変わりますか?
A. 偽造罪の時効は変わりませんが、別の罪が成立する可能性があります。
有印私文書偽造罪の時効(5年)は、あくまで偽造行為が完了した時点からカウントされます。後日その書類を使ったとしても、偽造罪の時効の起算点がずれることはありません。
ただし、偽造した書類を使う行為は「偽造私文書等行使罪」(刑法第161条)という別の犯罪にあたります。こちらの罪の時効も5年ですが、起算点は「偽造書類を行使(使用)した時」です。
つまり、偽造から5年が経過して偽造罪の時効が成立していても、その後に書類を使えば、行使罪で処罰される可能性が残るのです。
Q2. 時効が成立していれば、絶対に逮捕されませんか?
A. 可能性は限りなくゼロに近いですが、100%ではありません。
公訴時効が成立すれば、検察官は起訴できないため、起訴を前提とする逮捕も原則として行われません。
しかし、捜査機関が時効の起算日を誤解しているなど、何らかの間違いで逮捕に至る可能性も理論上はゼロではありません。万が一逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士を呼び、「時効が成立している」ことを法的に主張してもらうことが早期釈放への鍵となります。
Q3. 家族の代わりにサインしただけでも罪になりますか?
A. 本人の明確な同意がなければ、罪に問われる可能性があります。
たとえ家族であっても、本人の許可なく署名・捺印し、何らかの目的で書類を作成すれば、形式的には有印私文書偽造罪が成立します。「家族だから大丈夫」という安易な考えは危険です。
ただし、本人が「代わりにサインしておいて」と明確に依頼していた場合や、本人の利益のためで、本人の意思に反しないことが明らかな場合(例:入院中の親に代わり、急ぎの行政手続き書類にサインする)などは、罪に問われない可能性が高いでしょう。
しかし、遺産分割協議書や金銭が絡む契約書など、重要な書類への代筆は絶対に避けるべきです。必ず本人が署名するか、委任状を作成して正式な代理人として手続きを行いましょう。
過去の行為に対する不安は、一人で抱え込んでも解決しません。ご自身の状況が法的にどう判断されるのか、時効は成立しているのか、正確に知るためには法律の専門家である弁護士への相談が最も確実な方法です。
専門家に相談したい方へ
有印私文書偽造罪や時効について不安がある方、過去の行為について法的なアドバイスが必要な方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
P4 MARKETでは、匿名で弁護士に30分単位でオンライン相談ができます。プライバシーは守られますので、安心して具体的な状況を話し、専門的なアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。まずは専門家の意見を聞き、心の負担を軽くすることから始めてみませんか。
本記事は2025年10月15日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。