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2025-10-20 遺言書と遺産分割協議書の違いとは?円満相続のための書き方ガイド

作成日: 2025年10月20日

遺言書と遺産分割協議書のイメージ

相続の話になると、遺言書遺産分割協議書という言葉を耳にします。この二つは似ているようで、実は役割も作られるタイミングも全く異なります。

遺言書は、財産を残す本人が「この財産を、誰に、どう分けてほしいか」を生前に書き記す、いわば最後の意思表示です。一方、遺産分割協議書は、遺言書がなかった場合に、残された相続人たちが「では、みんなでこのように分けましょう」と話し合って決めた内容をまとめる公式な書類です。

どちらも相続手続きにおいて非常に重要な書類ですが、その違いを正しく理解しておくことが、スムーズで円満な相続への第一歩となります。

遺言書と遺産分割協議書の決定的な違い

家族が書類について話し合っている様子

いざ相続が始まってから「もっと早く準備しておけばよかった…」と後悔しないよう、それぞれの書類が持つ役割をしっかり押さえておきましょう。

遺言書があれば、法律で定められた相続のルール(法定相続)にとらわれず、ご自身の意思を財産の分け方に反映できます。例えば、「長年連れ添った配偶者により多くの財産を残したい」「事業を継ぐ長男に自社株を集中させたい」、あるいは法定相続人ではないけれど「お世話になった人へ感謝の気持ちとして財産を遺したい」といった希望も叶えられます。

それに対して、遺産分割協議書は、遺言書がない場合や、遺言書で触れられていない財産があった場合に必要となります。相続人全員で集まり、誰がどの財産をどれだけ受け取るかを話し合い、その合意内容を書面に残すのです。この書類がなければ、銀行は預金の解約に応じてくれませんし、法務局も不動産の名義変更(相続登記)を受け付けてくれません。

どちらの効力が優先される?

法律の世界では、原則として有効な遺言書の内容が、相続人たちの話し合い(遺産分割協議)よりも優先されます。これは、亡くなった方の最後の意思を最大限尊重するという、民法の基本的な考え方に基づいています。(参考: e-Gov法令検索 民法第九百二条)

ただし、これは絶対ではありません。遺言書があったとしても、相続人と受遺者(遺言で財産を受け取る人)の全員が「遺言とは違う分け方にしよう」と合意した場合は、その合意内容(遺産分割協議)が優先されることもあります。その場合は、別途、遺産分割協議書を作成することになります。

二つの書類の比較表

ここで、遺言書と遺産分割協議書の基本的な違いを表で分かりやすく整理してみましょう。この違いを頭に入れておくだけで、ご自身の状況にどちらが必要か、イメージしやすくなるはずです。

遺言書と遺産分割協議書の基本比較

比較項目 遺言書 遺産分割協議書
目的 故人の意思で財産の分け方を指定する 相続人全員の合意で財産の分け方を決定する
作成者 被相続人(財産を残す本人) 相続人全員
効力 遺言者の死亡時から効力が発生する 相続人全員の署名・押印で効力が発生する
タイミング 生前に作成する 相続開始後(死亡後)に作成する

この表を見ると、二つの書類の役割が全く異なることが一目瞭然です。

例えば、相続人同士の仲がどんなに良くても、自宅の土地建物のように物理的に分けられない財産があるケースは多いものです。そんな時、生前に遺言書で「自宅は妻に相続させる」と一筆残しておくだけで、残された家族が無用なことで頭を悩ませるのを防げます。

遺言書は、まさに「転ばぬ先の杖」。残された家族への最後の思いやりです。一方、遺産分割協議書は、相続人全員が協力して円満な解決を目指すための「約束の証」と言えるでしょう。

相続は、時に複雑な手続きや感情的なもつれを生むことがあります。もしご自身の財産が少し複雑だったり、相続人同士の関係に少しでも不安な点があったりするなら、迷わず専門家を頼るのが賢明です。

弁護士や司法書士、税理士といったプロは、法律や税金の面から、あなたやご家族にとってベストな方法を一緒に考えてくれます。P4 MARKETのようなプラットフォームを活用すれば、ご自身の状況にぴったりの信頼できる専門家を見つけ、気軽に相談から始めることができます。

法的に有効な遺言書とは?想いを確実に遺すための作成方法

遺言書に署名している様子

遺言書は、残された家族への大切なメッセージですが、その想いを法的に有効な形にするには、法律で決められたルールを守らなくてはなりません。せっかく心を込めて書いたのに、ほんの少しの形式ミスで無効になってしまうという事態は避けたいものです。

ここでは、最も一般的な「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」について、具体的な書き方から長所・短所まで、実用的な視点から解説します。

手軽さが魅力の「自筆証書遺言」

自筆証書遺言は、遺言者本人が手書きで作成する遺言書です。費用がかからず、誰にも知られずに自分のタイミングで書ける手軽さが最大の魅力です。

ただし、この手軽さゆえの注意点も少なくありません。作成する際には、次の3つのルールを必ず守ってください。

  • 全文、日付、氏名を自筆で書く
    パソコンでの作成や代筆は認められません。ただし、財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピーの添付が可能です。その場合でも、目録の全ページに署名と押印が必要です。(参考: e-Gov法令検索 民法第九百六十八条)
  • 必ず押印する
    印鑑は認印でも法律上は問題ありませんが、後々のトラブルを避けるためにも実印を使うのが最も確実です。
  • 日付を正確に書く
    「令和6年6月吉日」といった曖昧な書き方は無効とされる恐れがあります。「令和6年6月15日」のように、特定できる日付をはっきりと記しましょう。
自筆証書遺言は、本当に些細な形式ミスが命取りになります。例えば、日付の書き忘れや印鑑の押し忘れ。たったそれだけで、遺言書そのものが無効と判断されかねないのです。手軽だからこそ、細心の注意が必要です。

こうした形式不備のリスクに加え、自宅保管による紛失や改ざんの危険性も課題でしたが、これは新しい制度によって大きく改善されました。

安心と確実性を優先するなら「公正証書遺言」

公正証書遺言は、公証役場へ出向き、法律の専門家である公証人に作成してもらう方法です。専門家が関与するため、形式的な不備で無効になる心配はまずありません。

作成には証人2名の立会いが必要で費用もかかりますが、それに見合う法的な確実性と信頼性が得られます。

メリット

  • 形式ミスで無効になるリスクがほぼゼロ
  • 原本が公証役場で厳重に保管され、紛失や改ざんの心配がない
  • 相続開始後の家庭裁判所での「検認」手続きが不要で、手続きがスムーズ

注意点

  • 公証人手数料や証人への謝礼といった費用が発生する
  • 証人が2名必要(身近に頼める人がいなければ公証役場で紹介してもらえます)
  • 原則として公証役場へ出向く必要がある(事情によっては出張も可能です)

もし財産の種類が多かったり、分け方が複雑だったり、相続人同士の関係に少しでも不安があるのなら、公正証書遺言を選ぶことで、将来の揉め事を未然に防ぐ大きな安心材料になるはずです。

自筆証書遺言の弱点をカバーする「法務局保管制度」

これまで自筆証書遺言の大きな課題だった保管の問題は、2020年7月に始まった「自筆証書遺言書保管制度」で大きく改善されました。この制度を使えば、自分で書いた遺言書を法務局が安全に預かってくれます。(参考: 法務局 遺言書保管制度について)

この制度は急速に普及しており、開始から数年で保管申請件数は10万件を突破しました。これは、手軽さと安全性の両立を求める人がいかに多いかを示しています。

この制度の利点は、紛失や改ざんのリスクがなくなることだけではありません。公正証書遺言と同様に、家庭裁判所での検認が不要になるという大きなメリットもあります。費用は抑えたい、でも安全性は確保したい、そんな方にぴったりの選択肢です。

最終的にどちらの遺言書が良いかは人それぞれです。ご自身の財産や家族の状況をじっくり考え、最適な方法を選びましょう。もし判断に迷ったら、一人で悩まず弁護士や司法書士といった専門家に相談してみるのも良い方法です。

遺産分割協議書をスムーズに作成するための手順

遺産分割協議について話し合う家族

故人が遺言書を遺していなかった場合、相続手続きは相続人全員での話し合い、「遺産分割協議」から始まります。この話し合いで決まった内容を法的に有効な形にするのが「遺産分割協議書」です。

この書類は単なるメモではありません。銀行預金の解約から不動産の名義変更まで、あらゆる相続手続きで提出を求められる、非常に重要な公的書類なのです。ここでは、協議の準備から書類完成までの流れを、ステップごとに解説します。

ステップ1: 相続人と財産の調査

遺産分割協議を始める前に、絶対に手を抜いてはいけないのが「誰が相続人なのか」と「どんな財産があるのか」を正確に把握することです。この調査が不十分だと、後から新たな相続人や財産が見つかり、協議をやり直さなければならない事態になりかねません。

まず、亡くなった方(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本をすべて集め、相続人を確定させます。ご家族も知らなかった相続人が見つかるケースは、決して珍しくありません。

並行して、財産の調査も進めます。預貯金や不動産といったプラスの財産はもちろん、借金やローンといったマイナスの財産もすべて洗い出し、「財産目録」として一覧にまとめておくと、後の話し合いがスムーズに進みます。

ステップ2: 相続人全員での協議

相続人と財産の全体像が見えたら、いよいよ相続人全員で遺産の分け方を話し合います。全員で顔を合わせるのが理想ですが、遠方に住んでいるなど事情があれば、電話や手紙、メールでのやりとりでも構いません。

ここで最も重要なのは、必ず相続人全員が参加し、全員が合意することです。一人でも欠けていたり、内容に納得していない人がいたりすると、その遺産分割協議自体が無効になってしまいます。

協議がこじれる原因の多くは、感情的なもつれです。お互いの生活状況や故人への想いを尊重し、冷静に話し合う姿勢が何よりも大切です。「誰が正しいか」ではなく、「みんなが納得できる落としどころはどこか」という視点で話し合いを進めてみてください。

もし、どうしても話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという方法もあります。調停委員という中立な第三者が間に入ることで、冷静に話を進めやすくなります。(参考: 裁判所 遺産分割調停)

ステップ3: 遺産分割協議書の作成

全員の合意ができたら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にします。法律で決まったフォーマットはありませんが、後の手続きで困らないよう、以下のポイントは必ず押さえて作成しましょう。

  1. 被相続人を特定する
    はじめに、亡くなった方の氏名、最後の住所、本籍、死亡年月日を正確に記載します。
  2. 全員が合意したことを明記する
    「相続人全員で遺産分割協議を行った結果、以下の通り合意した」といった一文を入れ、これが全員の総意であることを示します。
  3. 財産の詳細を具体的に書く
    「誰が」「どの財産を」「どれだけ取得するか」を、誰が読んでもわかるように具体的に書きます。特に不動産や預貯金は、登記簿謄本や通帳の記載通り、一字一句正確に記載することが重要です。
    • 不動産: 所在、地番、地目、地積など、登記事項証明書(登記簿謄本)の情報をそのまま書き写します。
    • 預貯金: 金融機関名、支店名、口座の種類(普通・定期など)、口座番号まで明記します。
  4. 相続人全員の署名と実印を押す
    最後に、相続人全員が自署し、実印を押します。そして、それぞれの印鑑証明書を添付して完成です。

財産の記載例

財産の種類 記載内容の例
土地 所在: 東京都新宿区○○一丁目
地番: 123番4
地目: 宅地
地積: 150.00平方メートル
建物 所在: 東京都新宿区○○一丁目123番地4
家屋番号: 123番4
種類: 居宅
構造: 木造瓦葺2階建
床面積: 1階 60.00平方メートル、2階 50.00平方メートル
預貯金 ○○銀行 △△支店
普通預金
口座番号: 1234567
(相続開始日現在の残高全額)

この協議書は、相続人の人数分だけ作成し、全員が1通ずつ保管するのが一般的です。

遺産分割協議書の作成は、相続手続きの大きな山場です。もし相続人同士で意見がまとまらなかったり、書類の作成に不安を感じたりしたときは、専門家に相談することをおすすめします。弁護士や司法書士は、円満な解決策を提案し、正確な書類作りをサポートしてくれます。

具体的なケースで見る遺言書・遺産分割協議書の書き方

ここまで手続きの流れを説明しましたが、いざ白紙を前にすると「何から書けばいいのか…」と手が止まってしまう方も多いでしょう。

ここでは、よくある家族構成を例に、すぐに使える遺言書(自筆証書遺言)と遺産分割協議書の書き方を、雛形(テンプレート)を交えながら具体的に解説します。ご自身の状況に近いケースを参考に、大切な家族への想いを形にするためのヒントを見つけてください。

遺言書(自筆証書遺言)の書き方事例

自筆証書遺言は、すべて自分の手で書き上げることが基本です。ここでは、特に相談が多い2つのケースを取り上げます。

事例1: 配偶者と未成年の子どもがいるケース

自分が亡くなった後、残された配偶者が未成年の子どもを一人で育てていく状況を想定した遺言書です。この場合、残された家族の生活基盤を守ることを最優先に考えます。

遺言書(雛形)

遺言書

遺言者 山田太郎(昭和30年1月1日生)は、以下のとおり遺言する。

1. 妻 山田花子(昭和35年4月5日生)に、下記の財産を相続させる。
 (1) 土地
  所在: 東京都新宿区○○一丁目
  地番: 123番4
  地目: 宅地
  地積: 150.00平方メートル
 (2) 建物
  所在: 東京都新宿区○○一丁目123番地4
  家屋番号: 123番4
  種類: 居宅
 (3) 預貯金
  ○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号 1234567 の全額

2. 長男 山田一郎(平成25年8月10日生)が未成年者である間、上記1の財産の管理及び法律行為については、親権者である妻 山田花子が行うものとする。

3. 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻 山田花子を指定する。

令和6年7月1日

東京都新宿区○○一丁目123番4号
遺言者 山田太郎 ㊞

ポイント
財産を配偶者に集中させることで、その後の子育てや生活の基盤を安定させることが目的です。子どもが未成年だと特別な手続きが必要になることがあるため、遺言で親権者である配偶者の権限をはっきりさせておくと、銀行での手続きなどもスムーズに進みやすくなります。

遺産分割協議書の書き方事例

遺産分割協議書は、相続人全員が「この分け方で納得しました」という合意の証です。そのため、誰がどの財産をどれだけ受け取るのか、誰の目にも明らかなように正確に記すことが何よりも大切になります。

事例2: 子どもはおらず、妻と自分の兄弟姉妹が相続人になるケース

お子さんのいないご夫婦の場合、遺言がなければ、夫が亡くなった際の相続人は妻だけではありません。夫の兄弟姉妹(またはご両親)も相続人になります。ここでは、妻が安心して今の家に住み続けられるよう、不動産は妻が相続し、預貯金は兄弟で分ける、という形で合意したケースを想定します。

遺産分割協議書(雛形)

被相続人 鈴木一郎(最後の住所: 神奈川県横浜市…、最後の本籍: …、昭和25年2月2日生、令和6年5月5日死亡)の遺産分割につき、共同相続人である鈴木花子、鈴木三郎、佐藤良子は、全員で協議した結果、次のとおり合意したので、これを証するため本協議書を作成する。

1. 相続人 鈴木花子は、以下の不動産を取得する。
 【土地の表示】
  所在: 神奈川県横浜市港北区…
  地番: 567番8
  地目: 宅地
  地積: 120.00平方メートル

2. 相続人 鈴木三郎は、以下の預金債権を取得する。
  □□銀行 ◇◇支店 定期預金 口座番号 9876543

3. 相続人 佐藤良子は、以下の預金債権を取得する。
  △△信用金庫 ○○支店 普通預金 口座番号 1122334

4. 本協議書に記載のない遺産、及び後日発見された遺産については、相続人 鈴木花子がこれを取得する。

5. 相続人らは、本協議書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。

上記協議の成立を証するため、本協議書を3通作成し、相続人各自が署名押印の上、各1通を保有する。

令和6年7月1日

(相続人全員の住所・氏名を記載し、各自が署名・実印を押印)

ポイント
不動産情報は、登記事項証明書(登記簿謄本)の通りに一字一句間違えずに記載してください。ここが不正確だと、法務局での名義変更ができません。また、第4項のように「後から見つかった財産」の帰属先を決めておくと、万一の際に再度協議する手間を省けます。

雛形はあくまで「たたき台」です

ご紹介した雛形は一般的なケースを想定したものです。ご家族の状況は様々であり、事業用資産がある、相続人の中に連絡が取りづらい人がいるなど、事情が複雑な場合も少なくありません。安易に雛形を書き換えるだけで済ませると、かえって将来のトラブルの種になりかねません。

少しでも不安を感じたら、迷わず専門家の力を借りるのが一番の近道です。

相続手続きでよくある落とし穴と、それを避けるための対策

相続は誰にでも起こりうることですが、いざ直面すると「こんなはずではなかった」という事態に陥りがちです。手続きの進め方を一つ間違えるだけで、家族関係に深い溝が生まれることも少なくありません。ここでは、よくある失敗例とその対策を紹介します。

ケース1: 遺留分を無視した遺言書でトラブルに

「妻に全財産を」「事業を継ぐ長男にすべてを」。故人の強い想いが込められた遺言書が、かえってトラブルを招くことがあります。

法律では、兄弟姉妹を除く法定相続人に、最低限の遺産を受け取る権利として「遺留分(いりゅうぶん)」を保障しています。(参考: e-Gov法令検索 民法第千四十二条)遺言書の内容がこの遺留分を侵害していると、他の相続人から「遺留分侵害額請求」をされ、金銭で解決せざるを得なくなる可能性があります。

対策
遺言書を作る前に、誰にどれくらいの遺留分があるのかを把握することが重要です。その権利を尊重したうえで財産の分け方を考える配慮が、将来の揉め事を防ぎます。

ケース2: 財産調査が不十分で協議がやり直しに

遺産分割協議は、相続財産のすべてが明らかになっていることが大前提です。しかし、預貯金や不動産といったプラスの財産だけで話を進め、後から多額の借金が見つかるケースは後を絶ちません。こうなると、せっかくまとまった協議も白紙に戻ってしまいます。

  • プラスの財産: 故人が利用していた可能性のある金融機関への照会や、役所で不動産の「名寄帳」を取得するなどして、財産をリストアップします。
  • マイナスの財産: 借用書などを探すほか、信用情報機関に情報開示を請求すれば、ローンやクレジットの残高も把握できます。

ケース3: 相続人に特別な事情がある場合の対応ミス

相続手続きが難航する典型的なパターンとして、相続人の状況が複雑なケースがあります。

  • 相続人の一人が海外在住: 書類のやり取りに時間がかかり、連絡も取りづらいため、早めに連絡を取り、現地の日本領事館で「サイン証明」を取得してもらうなど、必要な手続きをあらかじめ伝えておくことが大切です。
  • 相続人に認知症の方がいる: 遺産分割協議は、全員が自己の意思で合意することが前提です。判断能力が不十分な方がいると、協議自体が無効になる恐れがあります。この場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任し、その方が本人に代わって協議に参加する必要があります。(参考: 法務省 成年後見制度について)

これらの失敗例は他人事ではありません。実際に、遺言書の有効性を確認する家庭裁判所の「検認」手続きは、2023年だけで2万2,314件も行われています。この数字は、いかに多くの家庭で法的な手続きが必要とされているかを示しています。

遺言書や遺産分割協議書は、単なる書類ではありません。残された家族の未来を左右する大切な文書です。手続きに少しでも不安を感じたら、専門家の知恵を借りることが、円満な相続への一番の近道です。

特に、相続関係が複雑な場合や財産の種類が多い場合には、弁護士や司法書士といったプロに相談するのが賢明です。

専門家への相談を検討すべきケースとは?

専門家に相談している様子

相続手続きは自分たちだけでも進められますが、状況によっては専門家の知恵と経験が不可欠な場合があります。具体的にどんな時に相談を検討すべきか、チェックリストで確認してみましょう。

専門家への相談チェックリスト

  • 相続人同士の仲が良くない、または意見が対立している
  • 相続人の中に行方不明の人や連絡が取りづらい人がいる
  • 相続人に未成年者や認知症の方がいる
  • 不動産や自社株など、評価が難しい財産がある
  • 遺産の総額が大きく、相続税がかかる可能性がある
  • 借金などマイナスの財産がどれくらいあるか不明
  • 遺言書の内容に納得できない相続人がいる
  • そもそも何から手をつけて良いかわからない

一つでも当てはまる項目があれば、専門家への相談を検討するサインです。

例えば、相続人同士の関係に少しでも不安があれば、弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、法的な観点から冷静な話し合いを進めることができます。

また、財産の種類が複雑な場合も重要です。不動産や非上場株式などの評価は専門知識が必要であり、税理士や不動産鑑定士に相談することで、公平な遺産分割と適切な相続税申告が可能になります。

ちなみに、相続税の申告が必要かどうかの境界線上にいる場合も、早めに税理士に相談するのが得策です。「小規模宅地等の特例」など、専門家でなければ適用が難しい控除をうまく活用することで、納税額を大幅に減らせる可能性があります。

近年、法的な手続きの安全性を重視する方が増えており、公証人が作成する公正証書遺言は年間10万件以上も作成されています。これは、将来のトラブルを未然に防ぎたいという意識の表れと言えるでしょう。

手続きに不安があったり、家族での話し合いが難航したりした場合は、問題が大きくなる前に専門家の力を借りましょう。早めの相談が、結果的に時間と心の負担を大きく軽減します。

遺言書・遺産分割協議書に関するQ&A

ここでは、遺言書や遺産分割協議書を作成する際によくある質問にお答えします。

Q1. 一度作成した遺言書の内容を後から変更できますか?

A1. はい、いつでも変更・撤回が可能です。
遺言は、遺言者の最終的な意思を尊重するものなので、いつでも全部または一部を取り消したり、新しい内容に書き直したりできます。

新しい日付で、法的に有効な形式(自筆証書遺言や公正証書遺言など)で全文を書き直すのが最も確実な方法です。前の遺言と新しい遺言で内容が矛盾する部分については、日付が新しい方の遺言が優先されます。(参考: e-Gov法令検索 民法第千二十三条)ただし、変更の際にも形式的なミスがあると無効になる恐れがあるため、専門家に確認してもらうと安心です。

Q2. 相続人の一人が遺産分割協議書への署名を拒否しています。どうすればよいですか?

A2. 家庭裁判所の調停・審判を利用します。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意があって初めて法的な効力を持ちます。一人でも署名・押印を拒否している間は、残念ながらその協議書は成立しません。

話し合いでの解決が難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるのが次のステップです。調停委員という第三者が間に入ることで、冷静な話し合いを進められる可能性があります。それでも合意に至らなければ「審判」という手続きに移り、最終的に裁判官が遺産の分け方を決定します。

Q3. 遺言書がありますが、相続人全員でこれとは違う分け方をしてもよいですか?

A3. はい、可能です。
法律上は遺言書の内容が最優先されるのが原則ですが、相続人と受遺者(遺言で財産を受け取る人に指定された人)の全員が納得しているのであれば、遺言とは異なる内容で遺産を分けることができます。

その合意内容をきちんと遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・押印すれば、そちらが有効な分割方法として認められます。ただし、これはあくまで「全員の明確な合意」が大前提です。一人でも反対すれば、原則として遺言書の内容に従うことになります。


相続の問題は、ご家族だけでは感情的になり、なかなか前に進まないことも少なくありません。そんなときは、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることが解決への近道です。

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本記事は2025年10月20日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。