2025-11-08 融資を引き出す事業計画書の書き方とは?【テンプレートと具体例で解説】
事業計画書とは、事業の目的、市場分析、競合、マーケティング戦略、そして財務計画といった要素を、第三者にも伝わるように整理した「事業の設計図」です。単なる書類作成ではなく、頭の中にあるアイデアを具体的な行動計画に落とし込む重要なプロセスとなります。
なぜ事業計画書は事業の成否を分けるのか?
「情熱と良いアイデアさえあれば、事業はうまくいくはずだ」。そう信じて起業する方は多いですが、それだけではビジネスという航海を乗り切ることは困難です。事業計画書は、その情熱を成功への具体的なルートに変えるための「設計図」であり、進むべき道を示す「羅針盤」の役割を果たします。
融資を受けるためだけに作る書類だと考えているなら、それは大きな誤解です。優れた計画書は、金融機関や投資家を説得するためだけでなく、何より経営者自身が事業の全体像を冷静に見つめ直し、課題を洗い出すための強力なツールになります。
成功確率を高めるデータ
事業計画の有無が、企業の存続にどれほど影響するかを示す調査結果があります。ある統計によれば、しっかりとした事業計画を持つ企業の5年後の生存率は72%にのぼる一方、計画なしでスタートした企業の生存率はわずか37%でした。この数字が、計画の重要性を物語っています。
なぜこれほどの差が生まれるのでしょうか。それは、計画書を作成する過程で、事業に潜むリスクや課題を事前に洗い出し、どう乗り越えるかを具体的に検討するからです。漠然としたアイデアが、具体的な数値目標や行動計画に落とし込まれることで、初めて現実味を帯びるのです。
事業計画書が果たす3つの重要な役割
事業計画書は、資金調達のためだけのものではありません。ビジネスを推進する上で、主に3つの重要な役割を担います。
思考の整理と事業の「見える化」
頭の中のアイデアを言葉や数字に書き出すことで、「ここのロジックが矛盾している」「この視点が抜けていた」といった点に気づけます。誰に、何を、どのように提供し、収益を上げるのか。このプロセスを通じて、事業の解像度が格段に上がります。
関係者との共通認識の形成
創業者だけでなく、従業員、共同経営者、取引先など、関わるすべての人が「自分たちの船はどこへ向かっているのか」を理解するための共通言語となります。これにより、チームの足並みがそろい、一貫した行動が可能になります。
外部からの信頼と協力の獲得
金融機関からの融資や投資家からの出資はもちろん、優秀な人材を惹きつけたり、有力なパートナーと提携したりする際にも、事業の将来性や実現可能性を客観的に示す「証明書」として機能します。
計画書の作成は、未来の成功をシミュレーションする行為そのものです。ここでどれだけ深く考え、具体的な絵を描けるかが、事業の成否を分ける最初の岐路と言えるでしょう。
計画書作成を始める前の準備
「事業計画書を作ろう」と思い立ち、いきなりテンプレートに向かっていないでしょうか。実は、質の高い計画書が書けるかどうかは、書き始める前の「準備」で9割が決まります。
このステップを省略すると、途中で筆が止まったり、説得力に欠ける内容になったりしがちです。まずは事業の土台を固めることから始めましょう。この準備こそが、読み手の心を動かす計画書づくりの鍵です。
事業コンセプトを明確にする
どんなに素晴らしいアイデアも、相手に伝わらなければ意味がありません。まずは、あなたの事業の「核」となるコンセプトを、誰が聞いても理解できるシンプルな言葉で表現しましょう。
この作業は、事業の輪郭をはっきりさせる工程です。次の3つの問いに答えてみてください。
- 誰の、どんな課題を解決するのか?(顧客の課題)
- なぜ、他社ではなくあなたのサービスを選ぶ必要があるのか?(独自の価値・強み)
- この事業を通じて、どのような未来を実現したいのか?(事業のビジョン)
例えば、「おしゃれなカフェを開きたい」というだけでは具体性に欠けます。「リモートワーカーが集中でき、健康的なランチも楽しめる、地域の新たなコミュニティ拠点となるカフェ」のように具体化することで、事業の方向性が明確になります。
事業コンセプトの言語化は、航海における「北極星」を決めるようなものです。この軸がしっかりしていれば、計画書のどの項目を書いても一貫性が保たれ、力強いメッセージを伝えることができます。
「いけるはず」を「いける根拠」に変える市場分析
情熱だけでは事業は成功しません。あなたのアイデアが単なる思い込みではなく、市場から求められていることを客観的なデータで証明する必要があります。そのために不可欠なのが市場分析です。
信頼できる公的データを活用し、事業の成功確率を裏付けましょう。
市場規模と将来性
参入しようとしている市場はどのくらいの規模で、今後成長するのか、あるいは縮小するのかを把握します。例えば、総務省統計局が公表している「日本統計年鑑」のような公的データは信頼性が高く、融資担当者などを説得する際の強力な根拠となります。
ターゲット顧客の具体化(ペルソナ設定)
「20代女性」のような曖昧な設定ではなく、「都内在住の28歳、IT企業勤務。健康志向で、平日のランチには1,200円までなら出す」といったように、一人の人物像を思い浮かべられるレベルまで具体化します。これにより、効果的なマーケティング戦略を立てやすくなります。
競合を分析し、自社の勝ち筋を見つける
どんな市場にも競合は存在します。競合を徹底的に分析することで、自社の独自の強みや補うべき弱みが明確になり、戦略のヒントが見つかります。
最低でも3社以上の競合をリストアップし、以下の点を分析してみましょう。
- 商品・サービス:価格、品質、機能的な特徴は?
- 強みと弱み:顧客がその競合を選ぶ理由は?逆に不満点は?
- 集客方法:どのような広告やSNSを活用しているか?
これらの情報を整理し、自社の戦略を練るのに役立つのがSWOT分析です。自社の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」、外部環境の「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を整理することで、思考が整理され、勝ち筋が見えてきます。
事業計画書の基本構成と各項目の書き方【具体例つき】
事業計画書は、あなたの情熱やアイデアを、読み手が納得できるビジネスの言葉に翻訳する作業です。決まったフォーマットはありませんが、融資担当者や出資者が知りたいポイントを押さえた、王道の構成は存在します。
ここでは、事業計画書の骨格となる項目ごとに、具体的な例文を交えながら書き方のコツを解説します。大切なのは、各項目で審査担当者が何を知りたいのか、その「問い」に的確に答えることです。
1. 企業概要(創業者のプロフィール)
まず「自己紹介」のパートです。事業計画書の冒頭で、誰が、どんな想いでこのビジネスを始めるのかを伝えます。読み手は、事業内容だけでなく、それを実行する「人」に強い関心を持っています。
審査担当者が知りたいこと
- 「この経営者は、事業を任せるに足る人物か?」
- 「これから始める事業に関する専門的な経験やスキルはあるか?」
- 「なぜこの事業を始めようと決めたのか?」
これらの疑問に答えるように、これまでのキャリアや資格、事業にかける想いを具体的に記述しましょう。特に、これから始める事業と直結する職務経歴は、成功の確度を高める強力なアピール材料になります。
記載例(カフェ開業の場合)
氏名・略歴
山田 太郎。大学卒業後、大手カフェチェーン「スターリバーコーヒー」で10年間勤務。うち5年間は店長として店舗運営全般(スタッフ育成、売上管理等)を経験。その後エリアマネージャーとして複数店舗の統括も担当。
保有資格
食品衛生責任者、バリスタ認定資格(SCAJレベル1)
創業動機
長年カフェの現場に立つ中で、お客様が本当に求めているのは「最高の一杯と、心からくつろげる空間」だと痛感しました。自身の店舗運営ノウハウを活かし、地域の方々が毎日でも立ち寄りたくなる温かいコミュニティカフェを作りたいという想いが強くなり、独立開業を決意しました。
2. 事業内容(ビジネスモデル)
次に、ビジネスの核心部分である「どうやって収益を上げるのか?」を説明します。専門用語を避け、誰が読んでも理解できる言葉で「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかを明確にしましょう。
総務省統計局のデータによれば、国内の様々な産業において、しっかりとした事業計画を持つ中小企業ほど売上成長率が高い傾向が見られます。これは、計画的な事業展開の重要性を示しており、この「事業内容」の明確化がその第一歩となります。
記載例(ITサービスの場合)
事業ドメイン
中小企業向けのクラウド型勤怠管理システムの開発・提供
ターゲット顧客
従業員50名以下の中小企業。特に、これまでタイムカードやExcelで勤怠管理を行ってきた、社内にIT専門部署がない企業を想定。
提供サービス
スマートフォンアプリとPCブラウザから簡単に使える勤怠管理システム「EasyTime」。打刻、残業申請、有給管理といった基本機能に加え、給与計算ソフトとの連携機能も提供。料金体系は月額制(サブスクリプション)。
事業の独自性(強み)
競合製品は多機能で複雑なものが多いですが、「EasyTime」は機能を絞り込み、ITに不慣れな方でも直感的に使えるシンプルさを追求。手厚い導入サポートと低価格を組み合わせることで、他社との差別化を図ります。
3. 市場環境と競合分析
「なぜ、あなたの事業は今成功するのか?」、その根拠を客観的なデータで示します。事前にリサーチした市場分析や競合調査の結果を、ここで分かりやすく整理して提示します。
ここでのポイントは、単にデータを並べるだけでなく、「このデータから、私たちのビジネスにはこれだけの機会がある」という自身の考察に繋げることです。読み手は、あなたの分析力と事業機会を見出す能力を見ています。
例えば、市場規模のデータを示すだけでなく、その市場が成長している背景(例:働き方改革によるリモートワークの普及)にまで言及すると、ストーリーに深みが出て説得力が増します。競合の弱点を具体的に指摘し、その隙を自社がどう攻略するのかを明確に示しましょう。
4. マーケティング・販売戦略
「どうやって顧客を集め、商品を販売するのか」という具体的なアクションプランです。どんなに優れた商品やサービスも、認知されなければ意味がありません。
考えられるマーケティング手法の例
Webマーケティング
- SEO対策:自社ブログで「勤怠管理 効率化」「中小企業 労務」といったキーワードで検索上位を狙い、見込み客を集める。
- Web広告:Facebook広告を活用し、中小企業の経営者や人事担当者にターゲットを絞ってアプローチする。
- SNS運用:Twitterで人事労務に関する役立つ情報を発信し、将来の顧客との関係を構築する。
オフラインでのアプローチ
- セミナー開催:地域の商工会議所と連携し「働き方改革セミナー」を開催し、サービスの認知度を高める。
- DM(ダイレクトメール):地域の法人リストを基に、サービスの案内を直接送付する。
これらの施策を、いつ、どの順番で、どれくらいの予算をかけて実行するのか、具体的な計画に落とし込むことが重要です。
5. 生産・オペレーション計画
商品やサービスを安定的に顧客へ提供するための体制や手順を説明します。特に、製造業や飲食業、店舗型ビジネスでは非常に重要な項目です。
具体的に記述すべきこと
- 仕入計画:主要な仕入先はどこか?安定供給は可能か?
- 生産方法:自社で製造するのか、外部に委託するのか?
- 人員計画:必要なスタッフの人数は?採用・育成方法は?
- 店舗・設備:店舗の場所はどこか?必要な設備と調達方法は?
これがITサービスであれば、システムの開発体制(内製か外注か)、サーバーなどのインフラ構成、顧客を支えるサポート体制といった内容が該当します。
6. 財務計画(収支計画・資金計画)
事業計画書の中で最も重要であり、多くの人が頭を悩ませるのが財務計画です。これまでのプランをすべて「数字」という共通言語に翻訳し、事業が本当に成り立つのか、どれくらいの収益が見込めるのかを客観的に証明するパートです。
財務計画は、主に次の3つの表から構成されます。
- 収支計画(損益計画):事業の「儲け」の見通し
- 資金繰り計画(キャッシュフロー計画):会社の「お金の流れ」が滞らないかの確認
- 資金計画(資金調達計画):「必要な資金」とそれをどう調達するかの計画
特に融資を受ける場合、「なぜ、この金額が必要なのか?」という問いに、誰もが納得できる根拠を示す必要があります。例えば、日本政策金融公庫が創業者向けに提供している事業計画書のテンプレートでも、この財務計画を具体的に記述する欄が設けられています。
このように、必要な資金を「設備資金」と「運転資金」に分け、それぞれ何にいくら使うのかを詳細に記載することが求められます。
売上予測の立て方
財務計画の出発点となるのが売上予測です。「これくらい売れたらいいな」という希望的観測ではなく、しっかりとした根拠に基づいて数字を組み立てる必要があります。
飲食店の例
客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数 = 売上
例:1,000円 × 20席 × 1.5回転 × 25日 = 月間売上 750,000円
ITサービス(サブスクリプション)の例
月額料金 × 顧客獲得数 = 売上
Web広告のクリック単価や成約率といったデータから顧客獲得単価(CPA)を算出し、投入する広告予算で何件の顧客が獲得できるかを予測します。
費用(コスト)の計算
売上を上げるためにかかる費用を、「変動費」と「固定費」に分けて考えます。
| 費用の種類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 変動費 | 売上の増減に伴って変動する費用 | 材料費、仕入原価、販売手数料 |
| 固定費 | 売上に関係なく毎月一定にかかる費用 | 家賃、人件費、水道光熱費、広告宣伝費 |
これらの数字を一つひとつ積み上げて、収支計画書や資金繰り計画書を作成していきます。
融資担当者の心を動かす、財務・資金計画の作り込み方
事業計画書の中で、あなたの情熱やアイデアが「本当に収益を生むのか?」という現実的な問いに答えるのが財務計画のセクションです。特に融資を検討している場合、ここの出来が結果を左右すると言っても過言ではありません。
融資担当者は、夢や情熱だけでなく、冷静で客観的な数字の裏付けを見ています。「なぜその資金が必要で、どう返済していくのか」。この問いに、誰もが納得できる答えを用意する必要があります。
すべての数字の出発点、「売上計画」の立て方
財務計画のすべての数字は、売上計画から生まれます。しかし、多くの人が「これくらい売りたい」という希望的観測で数字を設定してしまいがちです。それでは、融資担当者から「この数字の根拠は?」と問われた際に、説得力のある回答ができません。
重要なのは、客観的なデータや具体的な計算ロジックに基づいて、ストーリーを組み立てることです。
店舗ビジネスの例(カフェの場合)
「席数」「客単価」「回転率」「営業日数」といった要素を掛け合わせて、論理的に売上を算出します。
(例)客単価1,200円 × 20席 × 1日平均1.5回転 × 25営業日 = 月商900,000円
この時、「なぜ客単価が1,200円なのか?」「回転率1.5回は現実的か?」といった点について、周辺の競合リサーチの結果などを添えて説明できれば、計画の信頼性は一気に高まります。
Webサービスの例(サブスクモデルの場合)
広告費から逆算して、現実的な顧客獲得数を予測します。
(例)月間広告費100,000円 ÷ 顧客獲得単価(CPA)5,000円 = 新規顧客20人
月額料金3,000円 × 新規顧客20人 = 初月の売上60,000円
CPAの根拠として、業界の平均値や、少額で実施したテスト広告の結果などがあれば、説得力が増します。
売上計画は、楽観的すぎず、悲観的すぎない、現実的な着地点を見つけるのがコツです。初年度は少し固めに設定し、2年目、3年目と事業の成長に合わせて右肩上がりのストーリーを描きましょう。
何にいくら必要か?を明確にする「資金計画」
事業を開始し、継続していくために、いくらの資金が何のために必要なのかを具体的に洗い出すのが資金計画です。資金は大きく「設備資金」と「運転資金」の2つに分けて考えると、整理しやすくなります。
設備資金と運転資金の考え方
| 資金の種類 | 何のためのお金か? | 具体的な中身は? |
|---|---|---|
| 設備資金 | 事業を開始するために最初に必要となる大きな投資。 | 店舗の保証金、内装工事費、厨房機器、PC、ソフトウェア、社用車など。 |
| 運転資金 | 事業を運営していくために日常的にかかる経費。 | 商品の仕入れ代金、人件費、家賃、水道光熱費、広告宣伝費など。 |
融資を申し込む際は、これらの項目一つひとつについて「なぜこの金額が必要なのか」を証明する見積書などの書類を準備しておきましょう。
「なぜこの最新の厨房機器が必要で、それが結果的にどう売上につながるのか」といった具体的な説明が求められます。実際、日本政策投資銀行の調査でも、事業計画と連動した設備投資を行う企業ほど、競争力強化に成功しているというデータがあります。これは、計画的な資金配分がいかに重要かを示す証拠です。
事業の健康診断、「損益分岐点」を把握する
融資担当者が特に重視する指標の一つが損益分岐点です。これは、売上と費用が等しくなり、利益がゼロになる売上高のことです。「最低でもここまで売らないと赤字になる」というボーダーラインを示します。
損益分岐点を計算するメリットは以下の通りです。
- 事業の安全性がわかる:損益分岐点が低いほど、少ない売上で利益を出せるため、不測の事態に強い安定したビジネスだとアピールできます。
- 目標が具体的になる:毎月、毎週、毎日、どれくらいの売上を達成すればよいか、具体的な目標数値が見えてきます。
- コスト意識が高まる:固定費を削減すれば損益分岐点も下がります。経営をスリムにするためのヒントが見つかります。
事業計画書に損益分岐点を記載することは、「事業のリスクを理解し、その対策も考えている」という経営者としての姿勢を示すことにもつながります。
事業計画書でありがちな失敗と、専門家を頼るべき理由
情熱を注いで作り上げた事業計画書も、いくつかの「落とし穴」にはまることで評価が大きく下がってしまうことがあります。どんなに画期的なアイデアも、伝え方一つで価値が半減してしまうのは非常にもったいないことです。
ここでは、多くの起業家がつまずきやすいポイントと、その乗り越え方について解説します。
「こうなったら良いな」で終わる、甘い売上予測
最もよく見られる失敗は、希望的観測だけで作られた売上計画です。「この市場は伸びているから、うちも売れるはずだ」といった曖昧な理由だけでは、融資担当者は納得しません。
売上予測で重要なのは、客観的なデータと、誰が見てもわかる計算式です。例えば、飲食店であれば「客単価 × 席数 × 回転率」といった具体的なロジックが不可欠です。それぞれの数字の裏付けとして、競合店の調査データや地域の市場データを示せなければ、「夢を語っているだけ」と見なされてしまいます。
ターゲット顧客が不明確
「30代の女性」や「中小企業」といった広すぎるターゲット設定も危険です。ターゲットが曖昧だと、マーケティング戦略の焦点がぼやけ、「誰の心にも刺さらない」という結果を招きかねません。
読み手が知りたいのは、「なぜ、その顧客があなたの商品を選ぶのか?」という具体的なストーリーです。年齢や性別だけでなく、普段の生活、抱えている悩み、情報収集の方法など、顧客像を具体的に描くことで、事業の解像度が格段に上がります。
なぜ専門家の力が必要なのか?
事業計画書の作成は孤独な作業になりがちです。しかし、自分一人で完璧を目指そうとすると、視野が狭くなり、客観性を失ってしまうことが少なくありません。そんな時、税理士や中小企業診断士といった専門家は心強い味方になります。
専門家は、いわば事業計画書の「第二の目」です。自分では気づけなかった計画の矛盾や隠れたリスク、時には思いもよらないチャンスまで見つけてくれます。彼らの冷静なフィードバックこそが、計画の実現性を飛躍的に高める鍵となるのです。
専門家を頼るメリットは以下の通りです。
- 数字の説得力が格段に上がる
専門家は、多くの企業の財務状況を見てきたプロであり、現実的で説得力のある財務計画の作り方を熟知しています。特に融資審査で厳しく見られる資金繰りや損益分岐点の分析において、その経験は大きな武器になります。 - 「思い込み」から解放してくれる
事業への想いが強いほど、創業者は市場や競合を楽観的に見てしまいがちです。専門家はそこを冷静に見抜き、「その市場に本当に勝算はありますか?」「あの競合の強みを見落としていませんか?」といった的確な指摘をしてくれます。 - 融資の成功率が向上する
金融機関の担当者から見れば、専門家が確認した事業計画書は信頼性が高まります。第三者のお墨付きがあることで、計画全体の信憑性が増し、審査を有利に進められる可能性が高まります。
事業計画書の書き方でよくある質問
事業計画書の作成もいよいよ大詰めです。書き終える段階になると、「これでいいのだろうか?」と細かい点が気になったり、素朴な疑問が湧いてきたりするものです。
ここでは、多くの方がつまずきがちなポイントをQ&A形式で解説します。最後の不安を解消し、自信を持って提出できる計画書を完成させましょう。
Q1. 事業計画書は手書きでも良いですか?
結論から言うと、パソコンでの作成を強く推奨します。手書きが絶対に不可というわけではありませんが、融資担当者や投資家は毎日多くの計画書に目を通します。
その中で、読みやすさ、修正のしやすさ、数字の正確性といった観点から、パソコンで作成した方が圧倒的に有利です。手書きの文字に込めた熱意を伝えたいという気持ちも理解できますが、ビジネスの場では、WordやExcel、PowerPointなどで整えられた文書の方が、スムーズに評価されやすいのが実情です。
Q2. ページ数は何ページくらいが適切ですか?
事業計画書に「何ページ以上」という決まりはありません。しかし、一つの目安として全体で10〜20ページに収めると、読み手にとって親切です。
数ページでは情報が不足し、本気度が伝わりにくい一方、分厚すぎると要点がぼやけてしまいます。
大事なのは、ページの量よりも内容の質です。伝えるべきことを、いかに簡潔かつ具体的に書けるかが重要です。補足したいデータが多い場合は、本編とは別に「添付資料」として巻末にまとめるのがスマートな方法です。
Q3. 無料で使える良いテンプレートはありますか?
はい、あります。公的機関などが質の高いテンプレートを無料で公開しており、これらを活用しない手はありません。
特に、多くの起業家が参考にしているのが、日本政策金融公庫のテンプレートです。
日本政策金融公庫
実際に融資を申し込む際に使用される書式のため、必要な項目が網羅されています。何から手をつければよいか分からない場合は、まずこのテンプレートをたたき台にして構成を練ると良いでしょう。日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードページはこちら
もちろん、これらはあくまで土台です。ご自身のビジネスの魅力がより伝わるように、項目を追加したり、構成を入れ替えたりと、柔軟にカスタマイズして「勝てる」計画書に仕上げていきましょう。
事業計画書を一人で作成していると、「この書き方で本当に伝わるだろうか」「誰か客観的な意見をくれないか」と感じる瞬間が必ず訪れます。そんな時、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることが、成功への近道です。
実際に専門家に相談するには
事業計画書の作成において、行き詰まったり客観的なアドバイスが必要になったりした場合は、中小企業診断士や税理士といった専門家の支援を受けるのも有効な手段です。
P4 MARKETでは、事業計画のプロである中小企業診断士や税理士に、オンラインで気軽に相談することができます。匿名での相談も可能で、「この部分だけ聞いてみたい」といった使い方もできます。あなたのビジネスの成功確率を大きく高めるために、ぜひプロの視点をうまく活用してみてください。
本記事は2025年11月8日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。