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2025-11-20 利益相反とは?会社の信頼を守るための必須知識【具体例で解説】

作成日: 2025年11月20日

利益相反のイメージ

「利益相反」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。しかし、これは会社の役員や専門家だけでなく、ビジネスに関わるすべての人にとって他人事ではない重要なテーマです。

簡単に言えば、会社や顧客に対して果たすべき「誠実な責任」と、自分自身の「個人的な利益」が衝突してしまう状態を指します。この状態を放置すると、公正な判断が難しくなり、会社の損害や信頼の失墜といった深刻な問題につながる可能性があります。

この記事では、利益相反の基本的な意味から、具体的な事例、法律上の規制、そしてトラブルを未然に防ぐための実践的な対策まで、わかりやすく解説します。

利益相反とは何か?基本をわかりやすく解説

利益相反(りえきそうはん)とは、一方の利益を追求すると、もう一方の利益が損なわれてしまう、二つの利益が相反する状態のことです。

例えば、あなたが会社の備品を購入する担当者だとします。候補の中に、あなたの親族が経営する業者が含まれていたらどうでしょうか。

担当者としては「会社のために、品質が良く安価な製品を選ぶ」という責任があります。しかし、同時に「親族の会社を助けたい」という私的な感情も生まれるかもしれません。

このように、組織の一員としての公正な立場と、個人の利益や人間関係が対立する状況こそが、利益相反の典型例です。

なぜ利益相反が問題になるのか

利益相反が問題視されるのは、公正であるべきビジネスの土台を揺るがし、様々なリスクを生むからです。

  • 信頼の損失: 顧客や取引先、株主など、関係者からの信頼を失う原因となります。
  • 会社への損害: 不適切な取引により、会社が経済的な損失を被る可能性があります。
  • 法的なリスク: 会社法などの法律に違反した場合、役員個人が損害賠償責任を問われることもあります。

利益相反行為が問題となるかは、その人の意図(「会社に損害を与えるつもりはなかった」)や、実際に損害が発生したかどうかだけで判断されるわけではありません。取締役と会社が取引するといった「形式」そのものが重要視されるのが原則です。

このようなリスクを避けるため、会社法では取締役が会社と利益相反取引を行う場合、取締役会や株主総会での承認を義務付けています。これは、会社法第356条で定められています。(詳細はe-Gov法令検索 会社法第356条をご参照ください)

利益相反の基本を理解し、「怪しい」と感じたらすぐに対応することが、あなた自身と会社を守る第一歩です。判断に迷う場合は、専門家のアドバイスを求めるのも有効な手段です。

会社の役員が特に注意すべき利益相反の3つの類型

会社の経営を担う取締役などの役員には、常に「会社の利益」を最優先に考える忠実義務が課せられています。これは、自分の利益よりも会社の利益を優先し、誠実に職務を遂行する責任のことです。

この重要な義務があるため、会社法では特に問題となりやすい3つの行為を「利益相反取引」として定め、厳格な手続きを要求しています。これらの行為は、役員の個人的な利益のために、会社の利益が犠牲になるリスクが非常に高いからです。

会社の役員が注意すべき利益相反の類型を示すシンボルイラスト

類型1:直接取引と間接取引

役員が自分自身や第三者のために会社と取引を行うケースで、最も基本的な類型です。

  • 直接取引
    役員が会社の製品を個人的に購入したり、自分が所有する土地を会社に売却したりする取引です。役員個人と会社の利益が直接的に衝突する典型例です。
  • 間接取引
    一見すると会社と第三者の取引に見えますが、実質的には役員の利益(または不利益)に関わる取引です。例えば、役員の個人的な借金に対して、会社が保証人になるケースなどが該当します。

中小企業でよく見られるのが、社長が個人で所有する不動産を会社に事務所として貸し出すケースです。これも直接取引に該当します。家賃が市場価格より不当に高い場合、会社の利益を害する可能性があるため、客観的な判断が求められます。

これらの取引を行う際には、必ず事前に取締役会(取締役会設置会社でない場合は株主総会)で重要な事実を開示し、承認を得なければなりません。この手続きはe-Gov法令検索の会社法第356条で定められています。

類型2:競業取引

役員が、その地位を利用して得た会社のノウハウや顧客情報を使い、会社の事業と競合するビジネスを自分自身や第三者のために行うことです。

例えば、IT企業の取締役が在職中に独立し、自社の主力製品と競合するソフトウェアを開発・販売するようなケースがこれにあたります。これは、本来会社が得るべきであった利益を役員が横取りする行為であり、会社の利益を著しく害する可能性があります。

競業取引を行う場合も、事前に取締役会等の承認が必須です。

類型3:会社の事業機会の横取り

会社が狙っていたビジネスチャンスを、役員がその情報を利用して自分のものにしてしまう行為です。「会社の事業機会の奪取」とも呼ばれ、忠実義務違反の中でも特に問題視されることがあります。

例えば、会社が新規出店のために購入を検討していた土地の情報を知った役員が、会社より先に個人名義でその土地を買い占め、後に会社へ高値で転売しようとするケースなどが考えられます。

このような行為は、役員の忠実義務に真っ向から反します。実は、こうした利益相反のリスクは企業経営に限らず、大学と企業が連携する「産学官連携」の分野でも課題となっています。ある調査では、回答した159大学のうち約16%が「利益相反の事例があった」と回答しており、個人の利益と組織の利益が衝突する構図がいかに普遍的であるかを示しています。(独立行政法人等における利益相反マネジメントに関する調査研究の詳細はこちらでご覧いただけます)

「この取引は利益相反にあたるかもしれない」と少しでも感じたら、自己判断で進めるのは危険です。弁護士などの専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが会社とあなた自身を守る最善策です。

弁護士や医師など、専門家と利益相反の関係性

利益相反は、企業経営者だけの問題ではありません。むしろ、顧客や患者の利益を最優先するべき専門家にとって、より身近で深刻なテーマです。

弁護士、税理士、医師、公認会計士といった専門家は、その職業倫理の根幹として「依頼者の利益を最優先する」という忠実義務(または善管注意義務)を負っています。そのため、自身の利益や他の依頼者の利益が、担当する依頼者の利益と衝突する状況は、厳しく制限されています。

法廷の天秤や聴診器など、専門家の職務を象徴するシンボルイラスト

専門職における利益相反の具体例

専門家の世界では、利益相反を防ぐための厳しいルールが各職業法で定められています。

  • 弁護士のケース
    例えば、離婚調停において夫と妻、両方の代理人になることはできません。一方の利益を追求すれば、もう一方の不利益につながるため、双方に対する忠実義務を同時に果たすことが不可能だからです。これは弁護士法で明確に禁止されています。(詳しくはe-Gov法令検索の弁護士法第25条で確認できます)
  • 医師のケース
    特定の製薬会社から多額の講演料を受け取っている医師が、その会社の医薬品ばかりを処方するような場合、利益相反が疑われます。医師の判断が、患者にとっての最善の治療ではなく、製薬会社との金銭的な関係に影響されているのではないか、という懸念が生じるからです。

専門家が利益相反を避けなければならない最大の理由は、その業務が依頼者との絶対的な「信頼関係」の上に成り立っているからです。「この先生は、私のことより自分の利益を優先しているのでは?」という疑念を一度でも抱かれれば、信頼関係は崩壊し、専門家としての活動は困難になります。

フリーランスやコンサルタントも要注意

利益相反のリスクは、国家資格を持つ専門家だけのものではありません。複数のクライアントを抱えるフリーランスやコンサルタントも、意図せず利益相反の状況に陥る可能性があります。

例えば、あなたがマーケティングコンサルタントで、競合関係にあるA社とB社の両方から戦略立案を依頼されたとします。A社の業績を伸ばすための施策が、結果的にB社の市場シェアを奪うことにつながるかもしれません。これでは、両方のクライアントに対して誠実に職務を遂行しているとは言えなくなってしまいます。

「この案件、引き受けても大丈夫だろうか?」と少しでも懸念を感じたら、契約前に状況を客観的に見直すことが重要です。自分一人での判断に迷う場合は、利害関係のない第三者の専門家からセカンドオピニオンを得るのも賢明なリスク管理です。

なぜ法律は利益相反を厳しく規制するのか

法律が利益相反を厳しく規制する背景には、「信認義務(フィデューシャリー・デューティー)」という、社会の信頼関係を支える重要な原則があります。

これは、会社の取締役や弁護士のように「他人から信頼を託される立場」にある者は、自身の利益よりも、信頼を寄せた相手(会社、依頼者など)の利益を最優先に行動しなければならない、という考え方です。この原則があるからこそ、私たちは安心して会社の経営を任せたり、専門家に重要な相談をしたりできるのです。

公正な経済活動の土台を守るため

もし、誰もが自分の利益だけを考えて行動する社会だったらどうなるでしょうか。役員が会社の資産を私的に流用したり、専門家が依頼者に不利な契約を自分の利益のために推奨したりするかもしれません。

このような状況では、公正な経済活動は成り立ちません。信認義務は、社会という共同体を支える「信頼のインフラ」です。法律は、このインフラが個人の利益追求によって損なわれないよう、利益相反行為に厳しいルールを設けているのです。

例えば、会社法が取締役の利益相反取引に取締役会等の承認を義務付けているのは、信認義務という原則を具体的なルールに落とし込み、公正な取引を守るための「防波堤」としての役割を担っています。(関連条文はe-Gov法令検索の会社法第356条で確認できます。)

信頼関係を守るセーフティネットとして

法規制は、不正行為を罰するためだけのものではありません。問題が発生するのを未然に防ぎ、社会全体の信頼関係を守るセーフティネットとしての機能が非常に重要です。

ルールが明確であることで、責任ある立場の人々は自身の行動を客観的に見つめ、「今、自分は誰の利益のために行動すべきか」を常に意識するようになります。

かつて、臨床研究において、製薬会社から資金提供を受けている研究者の報告の信頼性が問題視されたことがあります。これは、研究の公正性という社会からの信頼を揺るがしかねない事態でした。この出来事をきっかけに、組織全体で利益相反を管理する重要性があらためて認識されるようになりました。(臨床研究の利益相反(COI)に関する共通指針についての報告で、詳しい背景を知ることができます。)

利益相反に関するルールは、自由な経済活動を縛るためのものではなく、私たちが安心してビジネスを行い、専門家の支援を受けられる社会を維持するための不可欠な土台なのです。

トラブルを未然に防ぐ!利益相反への実践的対策

利益相反の問題は、一度発生すると組織の信頼を大きく損ない、その回復には多大な労力がかかります。そのため、問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きないように「仕組み」で予防することが極めて重要です。

組織として先手を打ってリスクを管理する姿勢が、会社を守る最も効果的な対策となります。

盾のマークとチェックリストが描かれたシンボルイラスト

その第一歩として有効なのが、「利益相反ポリシー」の策定です。これは、組織内における利益相反に関する統一的なルールブックであり、以下のような内容を明確に定めます。

  • どのような行為が利益相反に該当するかの定義
  • 利益相反が疑われる場合の報告・相談手続き
  • 違反した場合の措置

ポリシーを形骸化させないためのポイント

立派なポリシーを作成しても、従業員に浸透しなければ意味がありません。ルールを組織文化として根付かせるための具体的な取り組みが必要です。

  • 定期的な研修の実施
    全従業員を対象に、利益相反の基本や自社のルールについて学ぶ研修を定期的に行いましょう。新入社員研修に組み込むことも効果的です。
  • 自己申告制度の導入
    従業員が、利益相反につながる可能性のある外部活動や利害関係について、年に一度などのタイミングで自己申告する制度です。これにより、潜在的なリスクを早期に把握し、対策を講じることができます。
  • 相談窓口の明確化
    「これは利益相反かもしれない」と感じた時に、誰に相談すればよいのかを明確にしておくことが重要です。気軽に相談できる窓口を設けることで、問題を一人で抱え込ませない体制を作ります。

利益相反ポリシーは、社員を縛るためのものではありません。むしろ、意図せず問題のある状況に陥ることから社員を守り、安心して業務に集中できる環境を作るための「ガイドライン」です。透明性の高いルールが、組織の健全な成長を支えます。

【簡単チェックリスト】自社の利益相反リスクを確認しよう

まずは以下の項目をチェックし、自社の状況を客観的に把握してみましょう。「はい」がつく項目があれば、利益相反のリスクが潜んでいる可能性があります。

チェック項目 はい いいえ
役員や従業員が、取引先の株式を保有したり、役員を兼任したりしている事例があるか?
役員やその親族が経営する会社と、定常的な取引があるか?
発注先の選定プロセスが不明確で、特定の担当者の裁量に任されている部分はないか?
利益相反について相談できる窓口や、報告するルートが明確に定められているか?
利益相反に関する社内規定(ポリシー)がない、または従業員に周知されていないか?

これは簡易的なチェックです。もし懸念点が見つかった場合や、より詳細なリスク評価を行いたい場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

利益相反に関するよくある質問(FAQ)

利益相反の概念は理解できても、具体的な状況に当てはめると判断に迷うことも少なくありません。ここでは、経営者や担当者からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 親族が経営する会社との取引は、すべて利益相反になりますか?

A1. いいえ、親族の会社との取引というだけで、直ちに利益相反として禁止されるわけではありません。

重要なのは、「取引条件が会社にとって不利益でないか」、そして「定められた手続きを経ているか」の2点です。市場価格と同等か、それ以上に有利な条件であれば、会社にとって有益な取引となり得ます。ただし、取締役が関与する取引の場合は、会社法に基づき、取締役会や株主総会で事実を開示し、承認を得る手続きが不可欠です。この透明性の確保が、後のトラブルを防ぐ鍵となります。

Q2. 必要な承認を得ずに利益相反取引を行ってしまった場合、どうなりますか?

A2. その取引自体が無効と判断されたり、後から取り消されたりする可能性があります。

さらに、その取引によって会社に損害が生じた場合、関与した取締役は会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。これは、取締役としての注意義務を怠った「任務懈怠」と見なされることもあり、経営責任を問われる重大な事態に発展しかねません。「少しだけなら」「バレないだろう」といった安易な判断は非常に危険です。

Q3. 顧問弁護士が、取引の相手方の相談にも乗っているようです。問題ありませんか?

A3. いいえ、それは典型的な利益相反であり、弁護士の職業倫理上、原則として許されません。

弁護士は、依頼者の利益を最大限に守る「忠実義務」を負っています。対立する当事者双方の代理人となることは、この義務に反するため、基本的にはできません。このような状況に気づいた場合は、速やかに弁護士に事実確認を行い、対応(どちらか一方の代理人を辞任するなど)を求めるべきです。場合によっては、顧問契約の見直しも検討する必要があるでしょう。判断に迷う場合は、別の専門家からセカンドオピニオンを得ることも有効です。

まとめ:利益相反の懸念があれば、まずは専門家に相談を

利益相反の問題は、法律の知識だけでなく、個別の状況や人間関係が複雑に絡み合うデリケートな分野です。そのため、自己判断で進めてしまうと、後で大きなトラブルに発展するリスクがあります。

「この取引、問題ないだろうか?」と少しでも不安を感じたら、一度立ち止まり、利害関係のない中立な専門家の意見を求めることが、最も賢明なリスク管理です。

かつて、企業と大学の共同研究における利益相反が社会問題となった事例があります。研究者が企業から多額の資金提供を受けていたことで、研究成果の公正性・中立性に疑念が生じ、社会の信頼が大きく揺らぎました。これは、専門家自身でさえ、客観性を保つことがいかに難しく、重要であるかを物語っています。(当時の課題については、こちらの調査報告書に詳しくまとめられています)

内部の人間だけでは気づけないリスクや、見落としがちな視点も、客観的な第三者の専門家が加わることで明らかになることは少なくありません。

問題が複雑化する前に、プロの知見を活用することが、最終的に会社とあなた自身を守ることにつながります。


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本記事は2025年11月20日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。