2025-11-21 勘定科目「旅費交通費」とは?仕訳から経費精算までわかりやすく解説
会社の業務で移動したり、泊りがけで出張したり。そういった時にかかった経費を計上するための勘定科目が「旅費交通費」です。
これは、従業員が会社の仕事のために普段の勤務地を離れて移動した際の交通費や宿泊費などをまとめる、とても重要な項目です。旅費交通費を適切に処理できれば、会社の支出を正確に把握できるだけでなく、節税にもつながります。
この記事では、旅費交通費の基本的な考え方から、具体的な仕訳例、税金の扱い、そして法改正への対応まで、中小企業の経営者や経理担当者が知っておくべきポイントを、実用的な例を交えて解説します。
そもそも旅費交通費とは?基本と対象範囲をおさえよう
経理の仕事で「旅費交通費」といえば、業務上の移動や出張にかかった費用を管理するための勘定科目です。これを正しく理解し、他の似たような費用としっかり区別することが、正確な会計処理への第一歩になります。
もし勘定科目の選択を間違えてしまうと、税務調査で指摘されたり、会社の経費管理が曖昧になったりするリスクも考えられます。だからこそ、基本をしっかり押さえておくことが大切です。
旅費交通費にはどんな費用が含まれるの?
では具体的に、どんなものが旅費交通費になるのでしょうか。一般的には、次のような費用が当てはまります。
- 電車やバス、飛行機などの運賃: いわゆる公共交通機関の利用料金です。
- タクシー代: 仕事での移動でタクシーを使った場合の料金。
- 高速道路などの有料道路料金: 営業車での移動で発生したETC料金もここに含まれます。
- 出張時のホテル代: ホテルや旅館など、出張先での宿泊にかかる費用。
- 出張手当(日当): 出張中の食事代やちょっとした雑費をカバーするために支給する手当です。
- 駐車場代: 外出先で営業車やレンタカーを停めたときのパーキング料金。
これらに共通しているのは、「会社の仕事をするために必要な移動」という目的がある点です。
「これは旅費交通費?」迷いやすい科目との違い
経理担当者が頭を悩ませがちなのが、この旅費交通費と他の勘定科目の使い分けです。特に間違いやすい代表的な科目と、その違いを比べてみましょう。
- 交際費との違い: 取引先との食事会や、その会場への移動で使ったタクシー代は「交際費」になります。旅費交通費はあくまで仕事のための移動費であり、接待やおもてなしが目的の費用とはきっちり分けましょう。
- 福利厚生費との違い: 社員旅行や忘年会といったイベントの費用は、従業員のための福利厚生が目的なので「福利厚生費」です。業務命令で行く出張とは、目的がまったく違います。
- 研修費との違い: 仕事に必要なスキルを身につけるためのセミナーや研修会に参加するときの交通費・宿泊費は「研修費」として処理することがあります。ただし、これは会社の方針によって旅費交通費に含めて処理するケースもあります。
ここで、旅費交通費と関連する科目の違いを一覧表にまとめてみました。日々の仕訳で迷ったときに参考にしてください。
旅費交通費と関連費用の違い早見表
| 勘定科目 | 主な目的 | 具体的な支出例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 業務遂行のための移動・宿泊 | 電車代、新幹線代、飛行機代、ホテル代、出張手当、高速道路料金 | あくまで業務に直接関連する移動が対象。通勤手当は「給与手当」として扱うのが一般的。 |
| 出張費 | 出張に伴う費用の総称(科目として独立させる場合) | 旅費交通費の内訳と同じ(宿泊費、交通費、日当など) | 会社によっては旅費交通費と分けず、すべて旅費交通費で処理することも多い。社内ルールを確認。 |
| 交際費 | 取引先などの接待・贈答 | 接待飲食費、ゴルフプレー代、お中元・お歳暮代、接待場所へのタクシー代 | 損金算入に上限があるため、旅費交通費との区別は特に重要。 |
| 福利厚生費 | 従業員の慰安・福利厚生 | 社員旅行費、忘年会・新年会費、慶弔見舞金、健康診断費用 | 全従業員が対象で、社会通念上妥当な金額であることが条件。 |
| 研修費 | 業務に必要な知識・技術の習得 | セミナー参加費、研修会場までの交通費、教材費 | 研修内容が業務に直接関係している必要がある。 |
この表を見れば、それぞれの科目が持つ「目的」の違いがよくわかりますね。この目的を意識することが、正確な仕訳の鍵となります。
最近はビジネスのグローバル化や国内での人の移動が活発になり、企業の出張も増えています。日本政府観光局(JNTO)の統計を見ても、海外との行き来は高い水準で推移しており、それに伴って海外出張の機会も増えていると考えられます。こうした状況は、経理処理における「旅費交通費」の重要性がますます高まっていることを示しています。
このように、旅費交通費の範囲と他の科目との境界線をはっきりさせておけば、日々の経費精算もスムーズかつ正確に進められます。もし判断に迷うようなケースが出てきたら、税理士のような専門家に相談するのも一つの手です。
具体的なケースで学ぶ!旅費交通費の仕訳はこうやる
旅費交通費という勘定科目の考え方が掴めてきたら、いよいよ実践です。実際の業務でどのように仕訳を切っていくのか、具体的なケーススタディを通して見ていきましょう。理論だけでなく、リアルな仕訳例に触れることで、日々の経理業務がぐっとスムーズになります。
ここでは、多くの中小企業でよく発生する6つのケースをピックアップしました。経理が初めての方でも迷わないように、具体的な金額や摘要欄の書き方のコツまで、わかりやすく解説していきます。
ケース1 従業員の通勤手当を給与と一緒に支払う
従業員の通勤手当は、毎月の給与と一緒に支払うのが一般的です。この場合、勘定科目は「給与手当」で処理することが多いですが、会社のルールによっては旅費交通費として計上することもあります。今回は、旅費交通費で処理するパターンを見てみましょう。
【例】従業員Aさんの1ヶ月分の通勤手当20,000円を、給与と合わせて普通預金から振り込んだ。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 | 従業員A 10月分通勤手当 |
摘要欄には、「誰の」「いつの」「何の費用か」を具体的に書いておくのがおすすめです。こうしておけば、後から帳簿を見返したときに、取引内容が一目でわかって非常に便利です。
ケース2 日帰り出張の電車代を現金で精算する
近場の取引先への訪問など、日帰り出張は日常的に発生します。従業員が交通費を立て替えて、後から現金で精算するというのは、経理の現場で最もよく見る光景の一つではないでしょうか。
【例】営業担当のBさんが、取引先訪問で使った電車代1,500円を立て替えた。後日、経理担当がBさんに現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 1,500円 | 現金 | 1,500円 | 10/25 Bさん 株式会社C訪問 電車代 |
このように、従業員の立替経費を精算する場合は、貸方(お金の出口)が「現金」や「普通預金」になります。シンプルで分かりやすい仕訳ですね。
ケース3 泊りがけの出張費用をまとめて精算する
遠方への出張となると、交通費だけでなく宿泊費もかかってきます。これらの費用は、まとめて「旅費交通費」として処理して問題ありません。
【例】従業員Cさんが大阪へ2泊3日で出張。新幹線代28,000円とホテル代18,000円(合計46,000円)を立て替えていたため、普通預金から振り込んで精算した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 46,000円 | 普通預金 | 46,000円 | Cさん 大阪出張(10/26-28)交通費・宿泊費 |
- 摘要欄を工夫してみよう: 泊りがけの出張なら、「出張期間」「目的地」「費用内訳(交通費・宿泊費など)」といった情報を追記しておくと、後々の管理が楽になります。
ケース4 海外出張の航空券代をカードで支払う
事業がグローバルに展開していると、海外出張も出てきます。航空券のような高額なものは、従業員の立替ではなく、会社が直接クレジットカードで支払うケースが多いでしょう。
【例】アメリカ支社への出張のため、従業員Dさんの航空券代250,000円を会社のクレジットカードで決済した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 250,000円 | 未払金 | 250,000円 | Dさん アメリカ出張 航空券代(XXカード) |
ここでポイントなのが、貸方科目です。カードで支払った時点ではまだ銀行口座からお金は引き落とされていないので、「未払金」という勘定科目を使います。そして後日、カード代金が口座から引き落とされたタイミングで、「未払金」を借方に、「普通預金」を貸方に計上して、この取引は完了です。
ケース5 社用車のETC料金が引き落とされる
営業車で高速道路をよく使う会社なら、ETC料金も旅費交通費です。これは通常、月末などにまとめて法人口座から引き落とされますね。
【例】月末に、社用車のETC利用料金15,000円が法人用の普通預金口座から引き落とされた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 15,000円 | 普通預金 | 15,000円 | 10月分 ETC利用料金 |
このとき、ETCの利用明細をきちんと確認し、プライベートな利用が含まれていないかをチェックするのも、経理の大事な仕事の一つです。
ケース6 接待相手を送るタクシー代を支払う
最後に、少し判断に迷うケースをご紹介します。取引先の方と会食した後、その方をタクシーで送った場合の費用はどう処理すべきでしょうか。
このケースでは、移動のためのお金ではありますが、その目的は「接待」の一環です。そのため、「交際費」として処理するのが正解です。
【例】取引先との会食後、担当役員を自宅まで送るタクシー代5,000円を従業員が立て替え、後日現金で精算した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 交際費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 | 株式会社E様 接待後タクシー代 |
このように、同じ「移動」にかかった費用でも、その目的が何だったのかをしっかり見極めることが、正確な会計処理の鍵になります。
ここで紹介したのは基本的な例ですが、実務ではもっと複雑なケースも出てきます。もし勘定科目の判断や仕訳で迷ったら、一人で抱え込まずに税理士などの専門家に相談するのが一番です。
旅費交通費で押さえておきたい税金の話
旅費交通費の会計処理で、経理担当者が特に気をつかうのが「税金」の扱いではないでしょうか。特に、消費税と所得税。この2つの観点から、どの経費が課税対象で、どれがそうでないのかをきっちり見分けることが、正しい税務処理のゴールです。
もしこの区別を間違えてしまうと、納める消費税額がズレてしまったり、従業員の給与課税にまで影響が出たりと、後々面倒なことになりかねません。だからこそ、担当者はこの違いをしっかり理解しておく必要があるのです。
消費税がかかる費用、かからない費用
「旅費交通費」とひとくくりに言っても、消費税の扱いはケースバイケースです。仕入税額控除を正しく計算するためにも、「課税」「非課税」「不課税」の3つの違いをここで整理しておきましょう。
- 課税仕入れになるもの(国内での移動や宿泊)
- 国内線の飛行機代
- 電車、新幹線、バス、タクシーの運賃
- 国内のホテルや旅館の宿泊費
- 高速道路の料金
- コインパーキングなどの駐車場代
国内での仕事の移動にかかる費用のほとんどは、消費税の課税対象です。これらの支払いには仕入税額控除が適用されるので、会社が納める消費税額を計算する上でとても重要になります。
- 課税対象にならないもの
- 海外出張の航空券代や現地の交通費、宿泊費(不課税)
- 法律で定められた金額以下の通勤手当(非課税)
- 出張手当(日当)(課税対象外)
なぜこう分かれるのかというと、海外での支払いは日本の消費税法が及ばないため「不課税」、通勤手当は社会政策的な理由から特別に「非課税」と決められているからです。
所得税:通勤手当と出張手当の非課税ルール
次に、従業員の給料、つまり所得税に関わる大事なポイントです。通勤手当と出張手当(日当)は、一定のルールさえ守れば、従業員の所得に含めずに支給できます。これは従業員にとっても会社にとってもメリットのある節税ポイントです。
通勤手当には非課税の上限がある
従業員の通勤にかかる費用を会社が「通勤手当」として出す場合、所得税法で「ここまでは税金をかけませんよ」という上限額が決められています。この限度額は、通勤手段によって変わってきます。
例えば、電車やバスなどの公共交通機関を使う場合と、マイカーや自転車で通勤する場合とでは、非課税になる金額が異なります。
片道の通勤距離に応じて段階的に設定されていて、あくまで「最も合理的」なルートの運賃が基準です。もしこの上限を超えて支給してしまうと、超えた分は「給与」とみなされ、所得税の対象になるので注意が必要です。
出張手当(日当)を非課税にするための2つの条件
出張に行くと、食事代やちょっとした雑費がかさむもの。その補填として支給されるのが出張手当(日当)ですが、これを非課税にするには、次の2つの条件をクリアする必要があります。
- 「出張旅費規程」が整備されていること: 役職ごとに日当はいくらか、といったルールが社内規程としてきちんと文書化されていることが大前提です。
- 金額が「社会通念上、妥当」であること: 同業他社や会社の規模と比べて、あまりに高額な日当は「給与」と判断されてしまうリスクがあります。
この2つを満たしていれば、従業員の所得税はかからず、会社側も消費税の課税対象外として処理できます。
インボイス制度が始まって変わったこと
2023年10月からインボイス制度が始まり、仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。
ただ、公共交通機関のように、いちいちインボイスをもらうのが難しい取引には特例が用意されています。具体的には、3万円未満の電車やバス、船の運賃については、インボイスがなくても帳簿に必要事項を記載すれば、仕入税額控除が認められます。
一方で、タクシー代や宿泊費、そして3万円以上の交通費については、原則通りインボイスの受け取りと保存が必要になるので、現場の従業員にも周知徹底しておきたいところです。
ビジネスが活発になれば、旅費交通費も自然と増えていきます。国土交通省の調査によれば、2025年7月には延べ宿泊者数が5,640万人泊に達すると予測されており、ビジネス利用も堅調です。こうした状況だからこそ、旅費交通費の管理と税務処理の重要性はますます高まっていると言えるでしょう。
旅費交通費の税務は、専門的な判断が求められる場面も少なくありません。「このケースはどうだろう?」と迷ったら、税理士のようなプロに相談するのが一番の近道です。
電子帳簿保存法に対応した領収書の取り扱い方
旅費交通費の精算に、領収書やレシートは欠かせません。ですが、ここ数年の電子帳簿保存法の改正によって、これらの書類の扱い方が大きく変わってきています。
これまでは紙での保存が当たり前でしたが、今はデータで保存するのが主流になりつつある、まさに過渡期です。この変化にしっかり対応できるかどうかで、経理業務の効率や税務上のリスクが大きく変わってきます。
領収書がないときはどうする?
近場の電車移動など、そもそも領収書が出ないケースは意外と多いものです。そんなときでも経費としてきちんと計上するために活躍するのが「出金伝票」です。
ただし、ただ作成すれば良いというわけではありません。税務調査が入ったときにも客観的な証拠として認めてもらえるよう、以下の項目はきっちり記載しておきましょう。
- 支払日:実際に交通費を使った日
- 支払先:利用した交通機関(例:JR東日本、東京メトロなど)
- 勘定科目:「旅費交通費」
- 摘要:何のための移動だったか(例:〇月〇日 株式会社△△へ訪問)
- 利用区間:どこからどこまで乗ったか(例:新宿駅~渋谷駅)
- 金額:かかった運賃
これだけの情報が揃っていれば、たとえ領収書が手元になくても、出金伝票がその代わりとしてしっかりと役目を果たしてくれます。
電子帳簿保存法の基本ルール
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類をデータで保存するときのルールを定めた法律です。保存方法には大きく分けて「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」の2種類があります。
2024年1月から、メールで届いたPDFの請求書や、Webサイトからダウンロードした領収書といった電子取引データは、データとして保存することが義務になりました。これを紙に印刷して保存するのは認められないため、注意が必要です。
この法改正は、ペーパーレス化を進める追い風になる一方で、すべての事業者に新しい対応を求めるものとなっています。
「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」の具体的な要件
紙でもらった領収書をスキャナーやスマートフォンで撮影してデータ化するのが「スキャナ保存」。最初からデータで受け取ったものをそのまま保存するのが「電子取引データ保存」です。
どちらの方法を選ぶにせよ、次の3つの要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保:タイムスタンプを付与するか、データの訂正や削除の履歴が残るシステムを利用すること。
- 可視性の確保:パソコンやプリンターなどを備え付け、必要なときにすぐデータを確認・印刷できるようにしておくこと。
- 検索機能の確保:「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの項目で、後からデータを検索できるようにしておくこと。
最近はビジネスでの移動もますます活発になっていて、旅費交通費の管理は複雑になる一方です。経費精算のデジタル化はもはや待ったなしの状況と言えるでしょう。
電子帳簿保存法の要件は細かい部分も多く、自社だけで完璧に対応するのは骨が折れるかもしれません。もしシステムの導入や運用に不安を感じたら、税理士のような専門家に相談するのが一番の近道です。
出張旅費規程、作っていますか?メリットと作成のポイント
旅費交通費の精算をもっとスムーズに、そして税務上の思わぬトラブルを未然に防ぎたい。そう考えたときに、実はとても頼りになるのが「出張旅費規程」です。これは、出張に関する社内ルールをきちんと文書化したもの。
「うちはまだ小さい会社だから、そんな大げさなものは…」と感じるかもしれません。でも、この規程があるかないかで、経理の手間から節税効果、ひいては社員のやる気まで、驚くほど変わってくるのです。
なぜ「出張旅費規程」が重要なのか?
出張旅費規程をしっかり作っておくと、会社にとって多くのメリットがあります。単に事務作業が楽になるだけでなく、経営の安定にもつながる、主な4つのメリットを見ていきましょう。
- 経費精算が驚くほどスムーズになる
「この出張、宿泊費はいくらまでOKだっけ?」こんな疑問がなくなります。規程があれば基準がはっきりしているので、社員は迷わず申請でき、経理担当者もルールに沿ってチェックするだけ。面倒な確認や差し戻しがぐっと減ります。 - 社員間の「不公平感」をなくせる
「Aさんの出張は良いホテルに泊まれるのに、自分はいつもギリギリ…」といった不満は避けたいものです。役職や出張先に応じて一律の基準で手当が決まれば、みんなが納得して仕事に集中できます。 - 「日当」を非課税で支給できる
これは経営者にとっても社員にとっても、大きなメリットです。規程に基づいて支給する日当(出張手当)は、社員の給与所得にはならず所得税がかかりません。もちろん、会社側の社会保険料の負担も増えないのです。社員の手取りは増え、会社のコストは抑えられる、まさに一石二鳥の制度です。 - 税務調査で慌てずに済む
税務調査では、経費が本当に事業に必要なものだったか、金額は妥当だったか、という点が厳しく見られます。そんな時、出張旅費規程があれば「会社の公式ルールに基づいて適正に支払っています」と胸を張って主張できます。経費として認められない「否認」のリスクを大きく下げてくれる、心強いお守りになります。
規程作成の具体的なステップ
「じゃあ、実際にどうやって作ればいいの?」と思いますよね。でも、そんなに難しく考える必要はありません。これから挙げるポイントを押さえながら、自社のスタイルに合わせて内容を組み立てていきましょう。
まずはこれだけ!盛り込むべき必須項目
どんな規程にも欠かせない、骨組みとなる基本項目です。これらをベースに肉付けしていきましょう。
- 目的: なぜこの規程を作るのか。「出張業務をスムーズに進めるため」といった会社の意思を記します。
- 適用範囲: 誰が対象になるのか。「正社員」だけでなく、「契約社員」など、対象者をはっきりさせます。
- 出張の定義: どこからが「出張」なのか。例えば「通常の勤務地から片道100km以上」など、具体的な線引きをします。
- 旅費の種類: 何を支給するのか。「交通費」「宿泊費」「日当」などをリストアップします。
- 役職ごとの支給基準: 役職(一般、課長、部長など)ごとに、日当や宿泊費の上限額を具体的に決めます。ここが公平性のキモです。
- 精算手続き: いつまでに、どうやって精算するのか。「出張後5営業日以内に領収書を添えて提出」のように、ルールを明確にします。
日当や宿泊費の金額は、「社会通念上、妥当な金額」でなければなりません。同業他社や同じくらいの規模の会社はいくらくらいか、相場をリサーチして、あまりに高額にならないように気をつけましょう。この金額の妥当性こそ、税務署に経費として認めてもらうための鍵となります。
出張旅費規程のサンプル(抜粋)
百聞は一見にしかず。実際の規程がどんなものか、簡単なサンプルを見てみましょう。
第1条(目的)
この規程は、役員および従業員が業務命令により出張する場合の旅費について定め、もって業務の円滑な運営を図ることを目的とする。
第5条(旅費の種類)
この規程で支給する旅費は、次のとおりとする。
- 交通費
- 宿泊費
- 日当
第8条(宿泊費)
宿泊費は1泊あたりの上限を次のとおり定め、領収書に基づき実費を支給する。
- 部長職以上: 15,000円
- 課長・係長職: 12,000円
- 一般社員: 10,000円
第9条(日当)
日当は、出張中の食事代や細々とした経費に充てるものとし、宿泊日数に応じて次の金額を支給する。
- 部長職以上: 3,000円
- 課長・係長職: 2,500円
- 一般社員: 2,000円
このように規程を一つ作っておくだけで、会社の守りはぐっと強固になります。
もし、「うちの会社に合った妥当な金額っていくらだろう?」「法律的に問題ないか心配…」といった不安があれば、税理士や社会保険労務士といったプロに相談するのが一番の近道です。
まとめ:旅費交通費の適切な管理が、健全な経営につながる
ここまで旅費交通費の細かなルールについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。この勘定科目を正しく管理することは、単なる経理作業の枠を超え、会社の信頼性や税務リスクの回避、ひいては経営全体の健全化に直結する、非常に重要な意味を持っています。
この記事で解説したポイントを一つひとつ実践していけば、経費精算はもっとスムーズで透明性の高いものになります。従業員にとっても公平なルールとなり、会社全体のキャッシュフロー改善にもつながっていくはずです。
まずはここから!明日からできる3つのアクション
「何から手をつければいいか分からない…」という方は、まず以下の3つから始めてみてください。自社の現状をチェックするだけで、課題がくっきりと見えてくるはずです。
- 自社の「旅費交通費」ルールは明確か?
「これって、本当に旅費交通費で合ってるんだっけ?」と、一度立ち止まって考えてみましょう。特に、交際費や研修費との線引きが曖昧になっていないか、過去の仕訳をいくつかピックアップして確認してみるのがおすすめです。 - 「出張旅費規程」はあるか?内容は古くないか?
もし規程がまだなければ、作成を真剣に検討するタイミングです。すでに規程がある場合も、日当や宿泊費の上限額が今の物価に見合っているか、定期的な見直しが欠かせません。 - 「電子帳簿保存法」への対応は万全か?
領収書の電子保存は、もはや避けては通れない道です。自社の運用ルールが、きちんと法律の要件を満たしているか、この機会にしっかり確認しておきましょう。
もし、規程の作り方が分からなかったり、税務上の判断に迷ったり、法改正への対応に少しでも不安を感じたりしたら、一人で抱え込まずに専門家の力を借りるのが一番の近道です。
旅費交通費でよくあるギモン、一挙解決します!
旅費交通費の処理は、日常業務でありながら「これって経費でいいんだっけ?」と迷うことが意外と多いものです。ここでは、特に個人事業主の方や経理担当者がつまずきやすいポイントを、Q&A形式でスッキリ解説していきます。
個人事業主の自宅から事務所までの交通費、これって経費?
Q1. 個人事業主です。自宅から契約しているレンタルオフィス(事務所)までの交通費は、経費にできますか?
A. これは残念ながら、原則として経費にはできません。自宅から事業の拠点である事務所までの移動は「通勤」扱いになってしまうためです。会社員の方が自宅から会社へ通う交通費が給与の一部(給与所得控除の対象)と見なされるのと同じ理屈です。
ただし、もし自宅を事務所として開業届を出しているなら話は別です。その自宅(事務所)から、打ち合わせのためにレンタルオフィスや取引先へ直接向かうのであれば、それは事業に必要な移動とみなされ、経費として計上できます。
社員旅行は「旅費交通費」?それとも「福利厚生費」?
Q2. 社員旅行の費用って、旅費交通費で処理するんでしょうか?福利厚生費との違いがよく分かりません。
A. 社員旅行の費用は、勘定科目「福利厚生費」で処理するのが正解です。旅費交通費はあくまで「業務命令による移動」のための費用ですが、社員旅行は「従業員の慰安」が目的だからです。支出の目的が違う、と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、福利厚生費として認められるには、税法上の要件を満たす必要があります。
- 旅行の期間は4泊5日以内
- 全従業員の50%以上が参加している
- 会社が負担する金額が社会通念上妥当な範囲内であること(一般的に1人10万円程度が目安とされています)
もしこれらの条件から外れてしまうと(例えば、役員だけで行く豪華な旅行など)、その費用は参加した人への給与(賞与)と見なされ、所得税の課税対象となる可能性があるので注意が必要です。
Suicaへのチャージ、いつ経費にするのが正解?
Q3. Suicaのような交通系ICカードにチャージしたお金は、チャージした瞬間に経費にできますか?
A. チャージした時点では、まだ経費にはできません。チャージしたお金は、いわば「プリペイドカードにお金を移動した」だけです。実際に電車に乗るなど、業務で利用して初めて「旅費交通費」という経費になる、という考え方です。
したがって、経費として精算するのはチャージ時ではなく、利用履歴を確認してからというのが正しい流れになります。駅の券売機で履歴を印字したり、スマートフォンのアプリで明細を確認したりして、業務で使った分だけをきっちり精算・記帳しましょう。業務利用と私的利用をしっかり分けることが、なによりも大切です。
旅費交通費の細かなルール作りや税金の判断など、専門的な知識が求められる場面で「どうしよう…」と手が止まってしまうことは、誰にでもあります。そんな時は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りるのが一番の近道です。