2025-11-23 解雇予告手当の計算方法 | 平均賃金の求め方とケース別シミュレーション
作成日: 2025年11月23日
突然の解雇は、従業員にとって大きな不安を伴います。その際、生活を守るために法律で定められているのが「解雇予告手当」です。これは、会社が従業員を解雇する場合、原則として30日以上前に予告するか、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないという、働く人を守るための重要なルールです。
この制度は、急な解雇によって収入が途絶えてしまう従業員の生活を守るためのセーフティネットとして機能します。本記事では、解雇予告手当の基本的な考え方から、ご自身の状況に合わせた正確な計算方法、そして万が一のトラブルに備えるための対処法まで、わかりやすく解説します。
解雇予告手当とは?まず基本を押さえよう
解雇予告手当は、予期せぬ解雇で収入が途絶えてしまう労働者の生活を守るための、いわばセーフティネットです。突然「明日から来なくていい」と言われてしまっては、翌月の家賃や生活費の支払いに困ってしまいます。この制度は、次の仕事を見つけるまでの間、最低限の生活を支えることを目的としています。
この制度の根拠は、労働基準法 第二十条に定められています。これは、会社が労働者を解雇する際には、相応の準備期間を与えるか、それに代わる金銭的な補償をしなさい、という使用者側の義務を明確にしたものです。
なぜこの制度が必要なのか?
もしこの制度がなければ、会社はいつでも一方的に、理由も告げずに従業員を解雇できてしまいます。それでは労働者の立場はあまりにも不安定です。解雇予告手当の存在は、会社に解雇という重い判断を慎重に行わせる、一種の抑止力としても機能しているのです。
具体的に、どんな場面でこの手当が重要になるか見てみましょう。
- 即日解雇を言い渡された場合:「明日から来なくていい」と突然言われたら、本来与えられるべき30日分の予告期間が全くありません。この場合、会社は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務があります。
- 予告期間が30日に満たない場合:例えば、10日後に解雇すると告げられたとします。この場合、30日に足りない20日分の平均賃金を支払う必要があります。
ポイント:解雇予告手当は、法律で保障された労働者の権利です。予告なしの解雇や、予告期間が短い場合は、この手当を請求できることをまず知っておくことが何よりも大切です。
実際のトラブル事例から見る手当の役割
解雇をめぐるトラブルで、この手当が問題になるケースは、やはり即日解雇や30日に満たない予告期間での解雇がほとんどです。解雇予告手当が争点となった事例を分析すると、その多くが、こうした急な解雇に集中していることがわかっています。
もし手当が適切に支払われなかった場合、労働者は労働基準監督署に相談することができます。労基署が間に入ることで、会社に支払いが命じられるケースも少なくありません。
解雇予告手当がいくらになるかは、あなた自身の平均賃金と、解雇予告の不足日数によって決まります。たとえば、20日前に解雇を予告された場合は、不足する10日分の平均賃金が支払われる、というシンプルな仕組みです。
解雇予告手当の支払いパターン早見表
解雇を告げられた日から実際の解雇日までの日数に応じて、支払われる手当の日数がどのように変わるかをひと目で確認できます。
| 解雇予告の日から解雇日までの日数 | 支払われる解雇予告手当(日数分) | 法的根拠(労働基準法) |
|---|---|---|
| 0日(即日解雇) | 30日分以上 | 第20条第1項本文 |
| 10日 | 20日分以上 | 第20条第2項(30日に満たない日数分を支払う) |
| 20日 | 10日分以上 | 第20条第2項(30日に満たない日数分を支払う) |
| 30日以上 | 0日(支払う必要なし) | 第20条第1項本文(30日以上前に予告しているため) |
この表からもわかるように、手当の支払いは労働者の権利を守る上で非常に重要な役割を担っており、会社側にはその適正な支払いが求められます。
もし解雇をめぐる状況で少しでも「あれ?」と思うことや不安を感じたら、まずはご自身の権利を確認することが第一歩です。ただ、会社との交渉は精神的にも負担が大きいもの。複雑なケースや会社とのやり取りに不安がある場合は、労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士といった専門家に相談するのが賢明です。
平均賃金の正しい算出方法
解雇予告手当の金額を決める上で、もっとも重要なのが「平均賃金」です。この計算をひとつ間違えるだけで、受け取れる手当の額が大きく変わってしまうこともあるので、しっかり押さえておきましょう。
お手元に給与明細を用意してみてください。これから説明する手順に沿って計算すれば、ご自身の平均賃金を正確に割り出せます。少し複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ見ていけば大丈夫です。
平均賃金を計算するときの基本ルール
まず、平均賃金の計算には、労働基準法で定められた基本の公式があります。ここが全ての計算の出発点になります。
直前の3ヶ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数
ポイントは「直前の3ヶ月間」の考え方です。これは、解雇を告げられた日(解雇予告日)のすぐ前の賃金締切日からさかのぼって3ヶ月間を指します。
たとえば、給料の締め日が毎月末日で、8月10日に解雇を告げられたとしましょう。この場合、計算のベースとなるのは、8月10日の直前の締め日である7月末日からさかのぼった3ヶ月、つまり5月、6月、7月分の給与ということになります。
この計算で間違えやすいのが、「賃金の総額に何を含めるか」と「総日数をどう数えるか」の2点です。
計算に入れるべき賃金、入れなくていい賃金
「賃金の総額」には、基本給だけでなく、毎月支払われる手当のほとんどが含まれます。ただ、中には例外的に含めないものもあるので、注意が必要です。
【計算に含めるもの・含めないもののチェックリスト】
✓ 含めるもの
- 基本給:月給、日給、時給など
- 各種手当:通勤手当、残業手当、休日出勤手当、深夜手当、役職手当、住宅手当、家族手当など
- 現物支給:通勤定期券など(評価額を換算)
✗ 含めないもの
- 賞与(ボーナス):3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの
- 臨時的に支払われる賃金:結婚祝い金やお見舞金など
- 退職金:解雇予告手当の計算とは別
この区別をしっかりしないと、計算結果がずれてしまいます。給与明細の項目を一つひとつチェックすることが大切です。
「総日数」の数え方には要注意
次に「その期間の総日数」ですが、これは会社の出勤日数(所定労働日数)ではありません。カレンダー上の日数で計算するのがルールです。つまり、土日祝日や有給休暇を取った日もすべて含めた暦日数で考えます。
たとえば、計算対象期間が5月、6月、7月だった場合、単純に各月の日数を足し合わせます。
- 5月:31日
- 6月:30日
- 7月:31日
- 総日数:31 + 30 + 31 = 92日
この暦日数で割ることで、1日あたりの平均的な賃金額を算出するわけですね。
具体的なケースで計算してみよう
では、実際の数字を当てはめて計算の流れを見てみましょう。
【月給制正社員の例】
- 賃金締切日:毎月末日
- 解雇予告日:8月10日
- 計算対象期間:5月、6月、7月
- 各月の給与(基本給+各種手当):
- 5月分給与:30万円
- 6月分給与:32万円(残業代が多かった月)
- 7月分給与:31万円
- 計算対象期間の総日数:92日(31日+30日+31日)
計算ステップ
- 賃金総額を出す:
30万円 + 32万円 + 31万円 = 93万円 - 1日あたりの平均賃金を出す:
93万円 ÷ 92日 = 10,108.69...円
(銭未満は切り捨て)
このケースでは、1日あたりの平均賃金は10,108円となります。
解雇予告手当は、労働基準法第20条に基づき、原則としてこの平均賃金の30日分が支払われます。この計算方法は、多くの裁判例や労働審判でも用いられる、労働者の権利を守るための重要な基準です。
もしご自身の給与体系が少し特殊だったり、計算方法に少しでも不安を感じたりした場合は、一人で悩まずに労働問題に詳しい社会保険労務士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。
雇用形態別の解雇予告手当計算シミュレーション
解雇予告手当の計算ルールは一見シンプルですが、いざ自分の状況に当てはめてみると、「で、結局いくらになるの?」と戸惑う方がほとんどです。働き方が多様化している今、雇用形態によって計算のちょっとしたコツや注意点が異なります。
ここでは、より具体的にイメージできるよう、3つの典型的なモデルケースをもとに計算のシミュレーションをしてみましょう。正社員、パートタイマー、時短勤務社員それぞれの計算プロセスを一緒に見ていくことで、ご自身のケースへの理解がぐっと深まるはずです。
ケース1:月給30万円の正社員 Aさんの場合
まずは、最も一般的な月給制の正社員のケースから見ていきましょう。Aさんはある日突然、会社から「今日限りで」と即日解雇を告げられました。
基本情報
- 雇用形態:正社員
- 給与体系:月給制(毎月末締め、翌月25日払い)
- 解雇予告日:8月10日
- 直前3ヶ月の給与:
- 5月分(6月25日払い):305,000円(基本給+手当)
- 6月分(7月25日払い):310,000円(残業代含む)
- 7月分(8月25日払い):300,000円
計算のステップ
- 計算期間の特定
解雇を告げられた日(8月10日)の直前の給料の締め日は7月31日ですね。ここから3ヶ月さかのぼるので、対象期間は5月1日から7月31日となります。 - 期間中の総日数を計算
カレンダーの日数を単純に足し合わせます。
5月(31日) + 6月(30日) + 7月(31日) = 92日 - 賃金総額を計算
この3ヶ月間にもらった給料の総額です。
305,000円 + 310,000円 + 300,000円 = 915,000円 - 1日あたりの平均賃金を算出
賃金の総額を、期間の総日数で割ります。
915,000円 ÷ 92日 = 9,945.65…円
小数点以下は切り捨てるルールなので、Aさんの平均賃金は9,945円です。 - 解雇予告手当の総額を算出
即日解雇なので、30日分の手当が支払われる必要があります。
9,945円 × 30日 = 298,350円
したがって、Aさんは会社に対して298,350円の解雇予告手当を請求できることになります。
実務上のワンポイント
月給制の場合、残業代の有無で毎月の給与額が変わることが多いですよね。この変動が計算結果に直接影響します。必ず直近3ヶ月分の給与明細をしっかり確認し、正確な金額を把握することが何より重要です。
ケース2:時給1,200円のパートタイマー Bさんの場合
次に、時給で働くパートタイマーの方のケースです。Bさんは週3日勤務でしたが、Aさんと同じく即日解雇を告げられました。時給制や日給制の場合、労働日数が少ないことで平均賃金が不当に低くなるのを防ぐための「最低保障額」という特別なルールがあります。ここが大きなポイントです。
基本情報
- 雇用形態:パートタイマー
- 給与体系:時給制(1,200円、1日5時間勤務)
- 勤務日数:週3日(月平均12日)
- 解雇予告日:8月10日(賃金締切日は末日)
- 直前3ヶ月の賃金総額:
- 5月(12日勤務):72,000円
- 6月(13日勤務):78,000円
- 7月(12日勤務):72,000円
まずは原則どおりに計算してみると…
- 賃金総額:72,000円 + 78,000円 + 72,000円 = 222,000円
- 総日数:92日
- 平均賃金:222,000円 ÷ 92日 = 2,413円
この金額だと、1日の労働実態に見合わないほど低くなってしまいます。そこで登場するのが「最低保障額」です。
最低保障額の計算
最低保障額は、原則の計算結果と比べて高い方の金額を平均賃金として採用する、という労働者を守るための仕組みです。
賃金総額 ÷ その期間の実際の労働日数 × 60%
Bさんのケースで計算してみましょう。
- 実際の労働日数:12日 + 13日 + 12日 = 37日
- 最低保障額:222,000円 ÷ 37日 × 0.6 = 3,600円
平均賃金の決定と手当額
原則計算(2,413円)と最低保障額(3,600円)を比べると、3,600円の方が高いですね。よって、Bさんの平均賃金はこちらの3,600円で計算します。
- 解雇予告手当:3,600円 × 30日 = 108,000円
この最低保障額のルールを知っているかどうかで、受け取れる手当が大きく変わってきます。パートやアルバイトで働いている方は、特にこの点をしっかり覚えておいてください。
ケース3:時短勤務中の契約社員 Cさんの場合
最後に、育児のために時短勤務をしていた契約社員のケースです。Cさんもまた、即日解雇を告げられました。時短勤務であっても計算の基本は同じですが、「どの時点の給与が基準になるか」がポイントです。
基本情報
- 雇用形態:契約社員(時短勤務中)
- 給与体系:月給制(毎月末締め)
- 解雇予告日:8月10日
- 直前3ヶ月の給与(時短勤務適用後):
- 5月分:200,000円
- 6月分:205,000円
- 7月分:200,000円
計算のステップ
計算方法はケース1のAさんと全く同じ流れです。
- 計算対象期間:5月1日〜7月31日
- 総日数:92日
- 賃金総額:200,000円 + 205,000円 + 200,000円 = 605,000円
- 平均賃金:605,000円 ÷ 92日 = 6,576円(小数点以下切り捨て)
- 解雇予告手当:6,576円 × 30日 = 197,280円
Cさんの解雇予告手当は197,280円となります。たとえ産休前や時短勤務に入る前の給与が高かったとしても、計算の基準はあくまで「解雇を告げられた日からさかのぼった直近3ヶ月間の実績」である、ということを覚えておきましょう。
雇用形態別 解雇予告手当の計算シミュレーション
ここまで見てきた3つのケースを一覧表にまとめました。正社員、パートタイマー、時短勤務社員それぞれの計算過程を比較することで、ご自身の状況と照らし合わせやすくなるかと思います。
| 項目 | ケース1 正社員 (月給30万円) |
ケース2 パートタイマー (時給1200円/週3日) |
ケース3 時短勤務社員 (月給20万円) |
|---|---|---|---|
| 計算対象期間 | 5月1日〜7月31日 | 5月1日〜7月31日 | 5月1日〜7月31日 |
| 期間中の総日数 | 92日 | 92日 | 92日 |
| 期間中の賃金総額 | 915,000円 | 222,000円 | 605,000円 |
| 期間中の労働日数 | (適用なし) | 37日 | (適用なし) |
| 原則計算の平均賃金 | 9,945円 | 2,413円 | 6,576円 |
| 最低保障額 | (適用なし) | 3,600円 | (適用なし) |
| 採用される平均賃金 | 9,945円 | 3,600円 | 6,576円 |
| 解雇予告手当 (30日分) | 298,350円 | 108,000円 | 197,280円 |
このように、働き方によって適用されるルールや注意点が異なることがお分かりいただけたでしょうか。
ご自身の状況に近いケースを参考に、まずは一度自分で計算してみることを強くお勧めします。もし計算が複雑で自信がない、あるいは会社から提示された金額に少しでも疑問を感じたら、ためらわずに専門家の力を借りましょう。
解雇予告手当が支払われない、ごく例外的なケース
労働者を守るための大切なセーフティネットである解雇予告手当ですが、実はすべての解雇で支払われるわけではありません。法律には、会社がこの手当を支払わなくてもよいと認められる、非常に限定的なケースが定められています。
ただし、これらの例外に当たるかどうかは会社が勝手に判断できるものではなく、とても厳しい基準が設けられています。どんな場合に手当が支払われないのかをきちんと理解して、ご自身の状況と冷静に照らし合わせてみましょう。
天災など、どうしようもない理由で事業が続けられなくなった場合
まず考えられるのが、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」です。これは、たとえば大地震で工場が全壊してしまった、大規模な火災や洪水で事業所が流されてしまった、といったケースを指します。
ポイントは、会社の努力ではどうにもならない不可抗力によって、事業そのものが立ち行かなくなった、という点です。単なる経営不振や業績の悪化といった理由は、この「やむを得ない事由」には当てはまりません。
しかも、この例外を適用するには、会社が労働基準監督署に「解雇予告除外認定」という申請をして、正式に認められる必要があります。「天災だから仕方ない」と会社が一方的に手当の支払いを拒むことはできないルールになっています。
解雇の原因が、明らかに労働者側にある場合
もう一つの例外は、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」です。いわゆる「懲戒解雇」に相当するような、労働者側に重大な問題があったケースがこれにあたります。
具体的には、次のような、かなり悪質なケースが想定されています。
- 会社のお金を盗んだり(窃盗・横領)、同僚に暴力をふるったり(傷害)といった犯罪行為
- 採用の決め手となった重要な経歴を偽っていたことが発覚した場合
- 2週間以上も無断で欠勤し、会社からの連絡にも一切応じないようなケース
- 勤務態度が著しく悪く、何度も注意しても全く改善の余地がない場合
これらは、会社と労働者の間の信頼関係を根本から壊してしまうほどの重大な裏切り行為と見なされるものです。
ここが重要:勘違いされがちですが、「懲戒解雇だから手当は出ない」と会社が即断できるわけではありません。この場合も、天災のケースと同じように、会社は事前に労働基準監督署から「解雇予告除外認定」を受ける必要があります。この認定がなければ、たとえ懲戒解雇であっても、即時解雇するなら解雇予告手当を支払う義務があるのです。
「解雇予告除外認定」って、一体なに?
「解雇予告除外認定」という言葉が何度か出てきましたね。これは、解雇予告や手当なしで解雇することが本当に妥当なのかを、労働基準監督署という中立な第三者機関が客観的に判断する手続きのことです。
会社側は、「なぜ手当を支払わずに即時解雇することが正当なのか」を、具体的な証拠を揃えて申請しなければなりません。労働基準監督署は、その理由が労働基準法 第二十条の但し書きに当てはまるかどうかを厳しく審査します。
正直なところ、この認定は簡単には下りません。会社側の主張が認められるハードルは非常に高く、労働者の責任がよほど重大だと判断された場合に限られます。
つまり、もし会社から「あなたの責任だから、予告手当なしで今日でクビだ」と言われたとしても、その裏付けとなる労働基準監督署の認定がなければ、法的にはその主張が通らない可能性が高い、ということです。
もし、ご自身のケースがこれらの例外に当てはまるのではないかと不安になったり、会社の言い分にどうにも納得がいかなかったりする場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談するのが一番です。
労働問題に強い弁護士や社会保険労務士なら、会社の主張が法的に妥当か、「解雇予告除外認定」は適切に行われているかを的確に判断してくれます。
解雇を告げられたら、まず何をすべきか?手続きと注意点
解雇予告手当の知識はあっても、いざ自分が当事者になると、冷静でいるのは難しいものです。しかし、こんな時こそ感情的にならず、一つひとつ手順を踏んで自分の権利を守ることが何よりも大切になります。
ここからは、解雇を告げられたその日から、手当を確実に受け取るまでの具体的なアクションプランと、知っておくべき注意点を解説していきます。
すぐにサインはNG!まずは「解雇通知書」の内容を吟味する
突然、口頭で解雇を告げられたとしても、必ず書面での通知を求めてください。これが、あらゆる手続きのスタートラインになる「解雇通知書」です。
そして、受け取ったからといって、その場でサインをしてはいけません。まずは深呼吸して、以下のポイントがきちんと書かれているか、自分の目でしっかり確認しましょう。もし曖昧な点があれば、その場で質問し、はっきりとした答えを求めることが重要です。
- あなたの氏名:宛名は間違っていませんか?
- 会社の名称・代表者名:誰からの通知かが明確になっていますか?
- 解雇日:いつをもって契約が終わるのか、具体的な日付は書かれていますか?
- 解雇理由:「能力不足」のような漠然とした言葉ではなく、どうして解雇に至ったのか、具体的な事実が記載されているかを確認しましょう。
- 解雇予告手当の記載:支払われる場合は金額と支払日、もし支払われないのであれば、その理由がはっきりと書かれていますか?
万が一、会社が書面を出すのを渋るようなら、「解雇理由証明書」を請求してください。これは労働基準法 第二十二条で認められた、私たち労働者の正当な権利です。
カッとなっても、退職届にはサインしないこと
解雇を告げられれば、怒りや不安で頭が真っ白になるのも無理はありません。ですが、その場の勢いで退職届にサインを求められても、絶対に応じてはいけません。うっかりサインしてしまうと「自己都合退職」として扱われ、解雇予告手当はもちろん、失業保険の給付でも不利になる恐れがあるからです。「一度持ち帰って検討します」と伝え、冷静になる時間を作りましょう。
会社が支払いに応じてくれない…そんな時の対処法
残念ながら、会社側が解雇予告手当の支払いを渋ったり、提示された金額がおかしいと感じたりするケースは、決して珍しくありません。そんな時は、次のステップに進む準備を始めましょう。
まず何より大切なのは、ご自身の権利を主張するための証拠集めです。以下の書類は、最低限手元に揃えておきましょう。
- 雇用契約書:給与や労働条件が書かれた、基本となる書類です。
- 給与明細(直近3ヶ月分以上):平均賃金を計算するために必須です。
- 就業規則:会社のルールブック。解雇に関する規定を確認します。
- 解雇通知書または解雇理由証明書:会社側の主張の根拠となります。
- タイムカードや業務日報のコピー:実際に働いていたことを証明する記録です。
これらの書類が揃ったら、内容証明郵便を使って会社に解雇予告手当の支払いを正式に請求する、という手があります。これは、「あなたが、いつ、どんな内容の請求をしたか」を郵便局が公的に証明してくれる制度で、後々、法的な手続きに進んだ際に強力な証拠になります。
ひとりで抱え込まず、専門家に相談する選択肢も
会社と直接やり取りするのが難しい、あるいは精神的にもう限界だ…と感じたら、ひとりで抱え込む必要はありません。専門家の力を借りるのが、賢明な判断です。
相談先には、いくつか選択肢があります。
- 労働基準監督署:無料で相談に乗ってくれ、会社への指導や是正勧告を行ってくれることもあります。ただし、あくまで中立的な立場なので、個人のトラブルに深く介入してくれるわけではありません。
- 弁護士や社会保険労務士:あなたの代理人として、会社との交渉から労働審判、訴訟といった法的手続きまで、すべてを任せることができます。
特に労働問題に強い専門家なら、解雇予告手当の正確な計算はもちろん、「そもそもこの解雇は不当ではないか?」という点まで踏み込んで判断してくれます。初回の相談を無料で行っている事務所も多いので、まずは話を聞いてもらうだけでも、状況が整理されて心が軽くなるはずです。
解雇予告手当の「?」を解消するQ&A
解雇予告手当について調べていると、どうしても「自分の場合はどうなんだろう?」という疑問が出てきますよね。ここでは、多くの方がつまずきやすいポイントや、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。一つひとつの疑問をクリアにして、落ち着いて次のステップに進みましょう。
Q1. 解雇予告手当はいつ、どんな形で支払われる?税金はかかるの?
これは最も基本的な、そして重要な質問です。
解雇予告手当は、原則として解雇日に支払われるべきものとされています。ただ、実務上は最後の給与と同じ日に振り込まれるケースも少なくありません。いずれにせよ、いつ支払われるかは解雇通知書に明記されているはずなので、必ずチェックしてください。
税金についてですが、この手当は給与ではなく「退職所得」という扱いです。ここが大きなポイントで、退職所得には手厚い控除(退職所得控除)が用意されています。そのため、勤続年数によっては税金が全くかからないことも珍しくありません。給与のように所得税や住民税がまるまる引かれるわけではない、と覚えておきましょう。
Q2. 会社が倒産…もう手当はもらえない?
会社の倒産は、本当に不安になりますよね。ですが、すぐに諦める必要はありません。会社が倒産したからといって、解雇予告手当の支払い義務がなくなるわけではないのです。
問題は、会社に支払い能力が残っていないケースがほとんどだという点です。そんな万が一の状況に備えて、国がセーフティネットを用意しています。それが「未払賃金立替払制度」です。
これは、会社に代わって国の機関(独立行政法人労働者健康安全機構)が、未払いの給与や退職金、そして解雇予告手当の一部を立て替えてくれる制度です。まずは最寄りの労働基準監督署へ相談し、この制度が利用できないか確認してみることが大切です。
Q3. 年俸制だと平均賃金の計算はどうなる?
年俸制の方も、平均賃金の計算方法は月給制と基本的には同じです。
まず、ご自身の年俸額を12で割って、1ヶ月あたりの給与額を割り出します。その金額をベースにして、「直近3ヶ月の賃金総額 ÷ その期間の総日数」という基本の式に当てはめて計算を進めます。
ただし、年俸制の場合は契約内容が少し複雑なことも。例えば、年俸に賞与分が含まれていたり、インセンティブの扱いが特殊だったりするケースです。まずは雇用契約書をもう一度じっくり読み返し、もし少しでも計算に自信がなければ、専門家に相談するのが確実です。
Q4. 計算が複雑でわからない…誰に相談すればいい?
「自分のケースが特殊で計算できない」「会社から提示された金額がどうもおかしい」…。そんなときは、一人で悩まず専門家の力を借りるのが一番です。
労働問題に強い弁護士や社会保険労務士(社労士)は、正確な手当の計算はもちろん、会社との交渉までサポートしてくれます。特に、解雇そのものに納得がいかず、不当解雇の可能性も考えているなら、法律のプロである弁護士への相談が心強い味方になるでしょう。
専門家への相談は少しハードルが高いと感じるかもしれません。そんなときは、オンラインで気軽に専門家を探せるプラットフォームが便利です。
実際に専門家に相談するには
解雇予告手当の計算や手続きは、法律の専門知識が必要な分野です。平均賃金の算出、労働基準法の解釈、会社との交渉など、一つ一つが権利の保護に直結する重要な判断となります。
P4 MARKETでは、労働問題に精通した弁護士や社会保険労務士が登録しており、30分単位で相談予約ができます。まずは自分の状況を整理し、専門家がどう見るかを聞いてみるだけでも、気持ちが楽になるはずです。客観的なアドバイスは、あなたの不安を解消し、次の一歩を踏み出すための大きな助けとなるでしょう。
本記事は2025年11月23日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。