2025-11-26 役員変更登記の期限はいつからいつまで?起算日と手続きを専門家が解説
作成日:2025年11月26日
会社の役員に変更があった場合、法律で定められた登記申請の期限は「変更が生じた日から2週間以内」です。これは、取締役が新たに就任したり、辞任したり、あるいは任期満了で再任(重任)したりといった、あらゆるケースで共通のルールです。会社の規模や種類にかかわらず、すべての企業が守らなければならない重要な義務となっています。
この手続きは、会社の「今」を正確に社会に示すためのものであり、期限を守ることは企業の信頼性を維持する上で不可欠です。本記事では、この「2週間」という期限の正しい数え方から、万が一遅れてしまった場合のリスク、そして具体的な手続きの流れまでを、わかりやすく解説します。
登記期限「2週間」の正しい数え方、知っていますか?
会社の役員構成が変わった際、その事実を法務局の登記簿に反映させる手続きは、法律によって義務付けられています。この手続きには「2週間」という厳格なタイムリミットが存在しますが、意外にも多くの経営者や担当者の方が「いつから数え始めるのか?」という起算点を誤解しがちです。
この期限を遵守することは、会社の社会的信用やコンプライアンスの根幹に関わる、まさに経営の基本です。うっかり期限を過ぎてしまわないよう、まずはこのルールの重要性と正しい知識をしっかりと押さえておきましょう。
なぜ登記期限がそんなに重要なのか
役員変更の登記は、会社の「現在の姿」を公的に証明するための大切な手続きです。もし登記情報が古いまま放置されていると、次のような思わぬトラブルを招きかねません。
- 取引先からの信用低下: 金融機関から融資を受ける際や、大手企業と契約を締結する際には、ほぼ必ず登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の提出が求められます。もし謄本の内容が実態と異なっていたら、「この会社は管理体制が不十分だ」と見なされ、信用を失ってしまう可能性があります。
- 法的なトラブルのリスク: 例えば、登記上は存在しない新しい役員が結んだ契約について、後から取引相手に「その契約は本当に有効なのか?」と疑義を呈される可能性もゼロではありません。
- 罰則の対象になる: 法律で定められた期限を破ると、後述する「過料」というペナルティが科されることがあります。
このように、登記期限を守ることは単なる事務作業ではなく、会社の安定経営に直結する重要な責務なのです。
「2週間」のカウントはいつからスタート?
「変更があった日から2週間」と聞くと、変更があったその日を1日目として数え始めるイメージを持つかもしれません。しかし、法律上の正しい数え方は少し異なります。
会社法第915条第1項により、役員変更が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請する必要があります。この期間の計算は民法のルールに従い、変更が生じた日の「翌日」を1日目(起算日)として数えます。もし期限内に手続きを怠ると「登記懈怠(とうきけたい)」という状態になり、会社の代表者個人が100万円以下の過料(行政上の制裁金)を科される可能性があります。詳細はe-Gov法令検索の会社法該当ページで確認できます。
つまり、役員の就任や辞任が決まった日の「次の日から数えて14日以内」に法務局へ申請書類を提出する必要がある、と覚えておきましょう。
いくつか具体的な例を見てみましょう。
役員変更の事由別 登記申請期限の計算例
役員の変更事由が発生した日を基準に、具体的な登記申請期限日をシミュレーションした表です。
| 変更事由が発生した日 | 起算日(翌日) | 登記申請の期限日 |
|---|---|---|
| 4月1日(株主総会で新取締役が就任承諾) | 4月2日 | 4月15日 |
| 5月10日(取締役が辞任届を提出し受理) | 5月11日 | 5月24日 |
| 6月30日(任期満了と同時に株主総会で重任) | 7月1日 | 7月14日 |
このように、「翌日から数える」というシンプルなルールさえ覚えておけば、計算は難しくありません。この起算日の考え方を正しく理解することが、期限超過を防ぐための第一歩です。
では、もしこの期限を過ぎてしまったら、具体的にどのようなペナルティが待っているのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
登記の期限を過ぎたら、どうなる?知っておくべきペナルティの話
役員変更登記の期限である「2週間」をうっかり過ぎてしまった場合、単に「遅れました」では済まされない、明確なペナルティが待っています。
この法律で定められた義務を怠ることを「登記懈怠(とうきけたい)」と言います。これは単なる手続きの遅れではなく、会社の信用問題にも関わる、経営者として軽視できないリスクなのです。
代表者個人に課される「過料」という罰則
登記懈怠のペナルティとして最も直接的なのが「過料(かりょう)」です。これは、交通違反の反則金のようなもので、刑事罰である「罰金」とは異なりますが、行政上のルール違反に対する金銭的な制裁です。
役員変更登記を怠ると、会社の代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。重要なのは、これが会社の経費ではなく、代表者個人の資産から支払わなければならないという点です。
では、どのように通知が来るのでしょうか。法務局が登記の遅れを把握すると裁判所に通知し、後日、裁判所から代表者の自宅に「過料決定」という通知書が届くのが一般的な流れです。
過料の金額はどう決まる?
「100万円以下」と聞くと驚くかもしれませんが、いきなり最高額が請求されるわけではありません。実際の金額は、登記がどれくらい遅れたかによって変わってくるのが実情です。
- 遅れた期間が短い場合: 数ヶ月程度の遅れであれば、数万円で済むことが多いようです。
- 遅れた期間が長い場合: 1年以上放置してしまうと、金額も数十万円と高くなる傾向があります。
とはいえ、最終的な金額は裁判所が判断するため、一概に「いくら」とは断言できません。たった1日でも期限を過ぎれば、過料の対象となるリスクは常に存在すると認識しておきましょう。
厄介なのは、この通知がいつ来るかわからないことです。登記申請をしてから数ヶ月後、場合によっては1年以上経ってから、忘れた頃に突然やってくるのが過料の怖いところです。
金銭よりも深刻?事業への間接的なダメージ
過料という直接的な罰則もさることながら、ビジネスの現場では、より深刻な影響が出る可能性があります。登記情報が古いままというのは、会社の「公的なプロフィール」が更新されていないのと同じ。これが、じわじわと会社の信頼を蝕んでいくのです。
具体的に考えられるリスク
- 融資審査での不利: 金融機関は融資の際、必ず会社の登記情報をチェックします。登記が実態と合っていなければ、「管理体制が不十分な会社」と判断され、審査でマイナス評価を受ける可能性があります。
- 大型契約の機会損失: 大手企業との取引や官公庁の入札では、登記事項証明書の提出が必須です。情報が古いと手続きが停滞するだけでなく、最悪の場合、取引そのものが白紙になる恐れもあります。
- 許認可手続きの停滞: 事業に必要な許認可の更新や新規取得の際、登記情報が不正確だと、申請自体を受け付けてもらえないケースがあります。
最も重い罰則「みなし解散」
登記を長期間にわたって放置した場合、最悪のシナリオが待ち受けています。最後の登記から12年が経過した株式会社は、「事業を停止している」と見なされ、法務局によって強制的に解散させられてしまうことがあるのです。これを「みなし解散」と呼びます。
これは本来、活動実態のない休眠会社を整理するための制度ですが、通常通り事業を続けていても登記を怠っていると、この対象になりかねません。
もちろん、いきなり解散させられるわけではなく、事前に法務省から通知が届きます。しかし、その通知を受けてから2ヶ月以内に「事業を続けています」という届出や登記申請をしないと、本当に解散したものとみなされてしまいます。これは、会社の存在そのものを揺るがす、最も重大なリスクです。詳しくは法務省のウェブサイトでも確認できます。
役員変更登記の期限を守ることは、単なる事務作業ではありません。会社の信用と未来を守るための、経営者の大切な責任なのです。もし手続きに少しでも不安を感じたら、迷わず司法書士などの専門家に相談することが賢明です。
役員変更登記、何から始める?手続きの全ステップと必要書類の集め方
役員変更登記の「2週間」という期限、これを守るための鍵は「段取り」です。一見すると手続きが複雑に感じるかもしれませんが、全体の流れを把握し、必要な書類を一つひとつ着実に準備していけば、決して難しいものではありません。
ここからは、役員変更の決議から法務局への申請完了まで、具体的なステップを追いながら解説します。このロードマップを参考に、抜け漏れのない手続きを目指しましょう。
ステップ1:社内での「役員変更の決議」
登記手続きの出発点は、役員変更を正式に決定する社内の意思決定です。会社の機関設計、つまり取締役会を設置しているかどうかで、決議の場所や方法が変わってきます。
- 取締役会がある会社の場合: 取締役会で代表取締役を選定します。
- 取締役会がない会社の場合: 株主総会で取締役を選任するのが一般的です。
この決議の内容が、後に作成する「議事録」の基礎となります。誰が、いつ、どのような役職に就任するのか(あるいは退任するのか)を、この段階で明確にしておくことが何よりも重要です。
ステップ2:登記に必要な書類の作成と収集
決議が完了したら、法務局へ提出する書類の準備に取り掛かります。役員の変更内容(新任、辞任、重任など)によって必要な書類は異なりますが、主に以下のものが中心となります。
役員変更登記の申請には、株主総会議事録や就任承諾書といった複数の書類が不可欠です。特に知っておきたいのが、2015年の商業登記規則改正です。これにより、取締役会を設置していない株式会社で代表取締役が就任する際には、個人の実印とその印鑑証明書、または本人確認証明書(住民票の写しなど)の添付が義務付けられました。これは、なりすましによる不正な登記を防ぐための重要なルールです。自社に必要な書類は、会社の機関設計(取締役会の有無など)によって変わるため、まずは自社の定款をしっかり確認することがスタート地点になります。この改正について、詳しくは法務省のウェブサイトでも確認できます。
具体的には、次のような書類を一つずつ揃えていきましょう。
主な必要書類リスト
- 変更登記申請書: 法務局のウェブサイトでテンプレートを入手できます。登記すべき事項を正確に記入します。
- 株主総会議事録 or 取締役会議事録: 役員変更を決議した会議の記録です。開催日時、場所、決議内容、出席役員の氏名などを記載し、議長や出席役員が押印します。
- 就任承諾書: 新任役員本人が「この役職に就くことを承諾します」という意思を示す書類です。本人の署名または記名押印が必要です。
- 印鑑証明書: 市区町村役場で発行されます。特に代表取締役が関わる登記など、重要な場面で必要となります。
- 本人確認書類: 運転免許証のコピーや住民票の写しなどです。ケースによっては、役員の本人確認のために求められます。
- 辞任届: 役員が任期途中で辞任する場合に必要です。
書類作成で特に注意したいのが、議事録の記載内容です。決議内容はもちろん、法律で定められた項目が一つでも欠けていると、申請が差し戻される原因となります。
ステップ3:書類が揃ったら法務局へ登記申請
すべての書類が整ったら、いよいよ最終ステップである法務局への申請です。期限は変更が生じた日から2週間以内。この期限は厳守しなければなりません。提出方法はいくつかあるため、自社の状況に合わせて最適なものを選びましょう。
申請が無事に受理され、登記が完了するまでには、通常1週間から2週間ほどかかります。書類に不備(「補正」といいます)がなければ、これで役員変更登記の一連の手続きは完了です。
もし、このプロセスの途中で「自社の場合はどの書類が必要だろう?」「議事録の書き方がよくわからない」といった疑問が生じたら、無理に独力で進めようとしないでください。時間だけが過ぎて、期限を逃してしまうリスクがあります。
そんな時は、登記のプロである司法書士に相談するのが最も確実な方法です。準備の早い段階で専門家のサポートを得ることで、手戻りをなくし、スムーズに期限内に申請を終えることができるでしょう。
登記申請の方法と費用の目安
役員変更に必要な書類がすべて揃ったら、いよいよ法務局への登記申請です。以前は法務局の窓口へ直接持参するのが一般的でしたが、現在は郵送や、PC一つで完結するオンライン申請など、方法が多様化しています。
それぞれの方法には、手間や時間、費用に違いがあります。「とにかく急ぎたい」「日中は時間が取れない」「少しでも費用を抑えたい」など、自社の状況に合わせて最適なルートを選びましょう。
申請方法は3種類 それぞれのメリット・デメリット
役員変更の登記申請は、大きく分けて「法務局の窓口」「郵送」「オンライン」の3つの方法があります。どれが一番良いというわけではなく、それぞれに一長一短があります。まずは各方法の特徴を理解し、自社に合った方法を見つけることが、スムーズな手続きへの第一歩です。
登記申請方法のメリット・デメリット比較
法務局の窓口へ直接行く方法、郵送で済ませる方法、そしてすべてをオンラインで完結させる方法。それぞれの利点や注意点、そして「自社にはどれが向いているか?」という疑問に答える比較表がこちらです。
| 申請方法 | メリット | デメリット | こんな会社におすすめ |
|---|---|---|---|
| 法務局窓口 | その場で書類をチェックしてもらえ、軽微なミスなら指摘してもらえる安心感がある。 | 法務局が開いている平日の日中に行く必要がある。移動や待ち時間もかかる。 | ・初めて自分で登記申請に挑戦する方 ・書類に不備がないか、直接確認したい方 ・会社の近くに法務局がある場合 |
| 郵送 | 自分の好きなタイミングで発送できる。遠方の法務局にも申請可能。 | 書類が法務局に届くまで日数がかかる。もし不備があると、郵送でのやり取りになり、完了まで時間がかかることも。 | ・平日に法務局へ行く時間を確保するのが難しい方 ・移動コストをかけたくない方 ・手続き完了まで時間に余裕がある会社 |
| オンライン | 24時間いつでも申請可能。場所を選ばず、移動時間もゼロ。登録免許税が安くなる場合も。 | 事前準備(専用ソフトのインストールや電子証明書の取得など)がやや複雑。PC操作に不慣れだと、かえって時間がかかることも。 | ・手続きを完全にオンラインで完結させたい方 ・登記申請の頻度が高い会社 ・ITツールの設定などに抵抗がない方 |
オンライン申請は、法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を利用します。一見便利ですが、事前の環境設定など、最初のハードルが少し高いと感じる方もいるかもしれません。
登記にかかる費用の内訳
役員変更登記を進めるにあたり、費用がいくらかかるのかは気になるところです。費用は、必ずかかるものと、状況に応じて発生するものに分かれます。あらかじめ全体像を把握しておきましょう。
1. 登録免許税(必須)
これは、登記を申請する際に国へ納める税金です。役員変更登記の場合、会社の資本金の額によって金額が決まっています。
- 資本金が1億円以下の場合:1万円
- 資本金が1億円を超える場合:3万円
この税金は、郵便局などで収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて納付するのが一般的です。オンライン申請の場合は、インターネットバンキングなどで電子納付することも可能です。
2. 司法書士への報酬(任意)
もし、一連の手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合は、その報酬が別途発生します。
司法書士に依頼した場合の報酬は、3万円~5万円程度が一般的な相場です。ただし、これはあくまで目安であり、役員の人数が多い、定款変更も同時に依頼するなど、手続きの複雑さによって金額は変動します。
この報酬には、書類作成から法務局への申請代行、関連する相談料まで含まれていることがほとんどです。
3. その他諸費用
手続きを進める中で、細かな費用も発生します。
- 印鑑証明書や住民票の取得費用: 1通あたり数百円程度。
- 郵送料: 書類を郵送で提出する場合の切手代や書留料金など。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得費用: 登記が完了したか確認するために取得する場合、1通600円(窓口の場合)かかります。
自分で手続きを行えば、費用は登録免許税の1万円(または3万円)と諸費用のみで済みます。しかし、書類作成の煩雑さや不備があった際の手間、そして何より本業に使うべき貴重な時間を考慮すると、専門家に任せるという選択肢も非常に合理的です。
登記手続きを円滑に進めるための実践チェックリスト
役員変更の登記手続きは、ステップが多く、一つひとつの確認作業を丁寧に進めることが重要です。「まだ大丈夫」と後回しにしていると、あっという間に「役員変更登記の期限」である2週間が迫っていた、という事態は絶対に避けなければなりません。
特に、書類の準備不足や些細な記載ミスは、申請が遅れる最大の原因です。そこで、手続き全体をスムーズに進め、うっかり期限を過ぎてしまうリスクを限りなくゼロに近づけるための、実践的なチェックリストを用意しました。各段階で一つずつ確認しながら、着実に手続きを進めていきましょう。
準備段階のチェックポイント
まずは登記申請に向けて、社内での意思決定と書類の土台作りを確実に行います。ここでの準備が、後の工程のスムーズさを左右します。
- □ 株主総会(または取締役会)の招集通知は、適切な時期に送付したか?
- 会社法や自社の定款で定められた期間を守り、株主や役員へ正式に通知しているかを確認します。
- □ 決議に必要な定足数(出席者数)と議決権数は満たしているか?
- 会議が法的に有効と認められるための大前提です。念のため、自社の定款を再確認しておきましょう。
- □ 役員の任期満了日や退任日は、正確に把握できているか?
- 特に役員が再任(重任)する場合、任期の計算を誤ると登記の起算日自体がずれてしまうため注意が必要です。
書類作成・収集段階のチェックポイント
次に、法務局へ提出する書類一式を揃えます。ここでは細部まで気を配ることで、後々の手戻りを防げます。
- □ 変更登記申請書の記載事項に、漏れや誤りはないか?
- 会社の基本情報、登記すべき事項、登録免許税の金額など、すべての項目が正しく埋められているかを確認します。
- □ 議事録の署名・押印は、定款の規定と一致しているか?
- 議事録に署名(または記名押印)すべき人物が、定款の定めに従っているかを確認しましょう。
- □ 就任承諾書の日付は適切か?(就任日と同じか、それ以降の日付になっているか)
- 見落としがちですが、就任を承諾する日付が、実際に役員になる日よりも前になっていないか注意が必要です。
- □ 新任役員の本人確認書類や印鑑証明書の有効期限は切れていないか?
- 一般的に、発行から3ヶ月以内といった有効期限が定められています。
- □ 書類一式に押印する印鑑は正しいか?(会社実印、個人実印など)
- どの書類にどの印鑑が必要なのかをしっかり確認し、押し間違えがないようにしましょう。
申請直前の最終チェックポイント
すべての準備が整ったら、いよいよ法務局へ提出です。その直前に、最後の念押し確認を行いましょう。
登記申請は、会社にとっての「公式発表」です。書類一つひとつの正確さが、会社の信頼性そのものを示します。このチェックリストで一つひとつ丁寧に確認作業を行うことが、登記懈怠という意図しないペナルティを避け、健全な会社運営を維持することにつながります。
- □ 登録免許税額の収入印紙(1万円または3万円)は用意したか?
- 申請書への貼り忘れは、受理されない原因となります。
- □ 書類は正しい順番で綴じられているか?
- 一般的には「申請書→議事録→就任承諾書→その他添付書類」の順でまとめます。
- □ 郵送する場合、宛先(管轄法務局)と「登記申請書在中」の朱書きは正しいか?
- 普通郵便ではなく、配達記録が残る書留郵便で送付すると安心です。
このチェックリストが、複雑な役員変更登記手続きを進める上での、確かな道しるべとなれば幸いです。もし手続きの途中で少しでも不安を感じたら、無理せず司法書士などの専門家に相談することも一つの有効な手段です。
司法書士への相談を検討すべきケース
役員変更登記は、手順を理解すれば自社で行うことも可能です。しかし、専門的な知識が求められる場面も多く、少しでも「これで正しいのだろうか?」と不安を感じた場合は、専門家に依頼するのが最も安心で、結果的に効率的な場合が多いです。
特に経営者にとっては、貴重な時間は会社のコア業務に集中させたいものです。専門家に任せることで得られるメリットは、コスト以上の価値があるかもしれません。では、具体的にどのようなタイミングで司法書士への相談を検討すべきでしょうか。
「専門家に任せたほうが良い」と考えられる具体的な状況
ご自身で手続きを進めるのが難しかったり、かえってリスクが高くなってしまったりするケースは、実は少なくありません。もし、以下の状況に一つでも当てはまるなら、専門家への相談を強くお勧めします。
- 役員変更が初めてで、何から手をつけていいか全くわからない
- 必要な書類や手順をゼロから調べ始めると、想像以上に時間と手間がかかります。専門家に依頼すれば、役員変更登記の期限である2週間というプレッシャーから解放され、確実に手続きを完了できます。
- 複数の役員が同時に就任・退任し、登記内容が複雑になっている
- 役員の入れ替わりが多いと、作成すべき議事録や添付書類も複雑化します。それぞれの書類の整合性を保ち、ミスなく申請を完了させるのは、まさに専門家の腕の見せ所です。
- 会社の事業目的や商号を変更するなど、他の登記も同時に行いたい
- 複数の登記をまとめて申請する場合、登録免許税の計算や申請書の書き方が特殊になります。司法書士であれば、こうした手続きもまとめて正確に処理してくれます。
- 本業が多忙で、登記手続きに割ける時間がない
- 経営者の時間は有限です。不慣れな事務作業に時間を費やすよりも、その時間を事業成長のために使う方が、会社全体にとって大きなプラスになるでしょう。
役員変更登記を専門家に依頼する最大のメリットは、単なる「時間の節約」だけではありません。法律のルールに則った正確な書類を作成し、期限内に申請まで代行してくれることで、「登記を忘れていた」というリスクをゼロにできる精神的な安心感は、想像以上に大きいものです。
信頼できる専門家の見つけ方
司法書士に依頼すると決めたら、次は信頼できるパートナー探しです。会社の大切な手続きを任せるため、実績や費用だけでなく、気軽に相談できるかといったコミュニケーションの取りやすさも重要なポイントになります。
もし身近に頼れる専門家がいない場合は、オンラインのプラットフォームを活用するのも有効な手段です。
役員変更登記の期限、こんなときはどうする?よくある質問を解決
役員変更登記の手続きを進めていると、「自社の場合はどうなるのだろう?」という細かな疑問が次々と生じます。特に役員変更登記の期限は法律で厳格に定められているため、些細な勘違いが後々面倒な事態につながりかねません。
ここでは、多くの経営者や担当者がつまずきがちなポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。疑問点を解消し、安心して手続きを進めましょう。
同じ役員が再任(重任)する場合も登記は必要?
Q. 役員の任期が満了し、同じ人がそのまま役員を続ける「重任」の場合でも、2週間の期限内に登記申請が必要なのでしょうか?
A. はい、その通りです。メンバーが変わらない重任の場合も、2週間以内に登記申請が必要です。
役員の顔ぶれに変化がなくても、法律上は「任期満了による退任」と「新しい任期での再任」という2つの手続きが行われたとみなされます。そのため、定時株主総会などで重任が決議された日から2週間以内に、役員変更登記を行わなければなりません。
数年に一度の任期満了は、日々の業務に追われていると忘れがちです。自社の定款で役員の任期を確認し、あらかじめスケジュールに組み込んでおくことが重要です。
登記期限の最終日が土日・祝日だったら?
Q. 2週間の期限を数えたら、最終日がちょうど土曜日でした。この場合、いつまでに申請すればいいですか?
A. 登記期限の最終日が土日、祝日、年末年始といった法務局の閉庁日にあたる場合、その次の開庁日(平日)が期限となります。
例えば、計算上の期限最終日が土曜日であれば、週明けの月曜日が新たな申請期限日となります。これは民法で定められているルールですので、慌てて休日に対応する必要はありません。
会社法における期間の計算には、民法のルールが適用されます。民法第142条には、期間の末日が休日にあたり、その日に取引の慣習がないときは、期間はその翌日に満了すると定められています。法務局は土日祝日に業務を行っていないため、このルールが適用されるのです。詳しくはe-Gov法令検索の民法第142条で確認できます。
書類不備で差し戻されたら、期限はどうなる?
Q. 期限ギリギリに申請したのですが、後日、法務局から書類の不備を指摘されました。もう期限切れになってしまいますか?
A. 書類の不備を法務局が指摘し、修正を求めることを「補正」といいます。一度、期限内に申請書を提出したという事実は記録されていますので、ご安心ください。
法務局から指示された期間内に書類を修正して再提出すれば、登記懈怠(とうきけたい)にはなりません。 ただし、注意したいのは、補正に応じずに申請そのものを取り下げてしまうケースです。この場合、次に申請した日が新たな受付日となり、もし最初の期限を過ぎていれば登記懈怠と見なされる可能性があります。
海外在住の役員がいる場合、期限は変わる?
Q. 海外に住んでいる人を新たに役員として迎えたいのですが、手続きや期限で気をつけることはありますか?
A. 海外在住の方が役員に就任する場合、国内在住の方とは異なる書類が必要になるため、注意が必要です。主な違いは、就任承諾書に添付する印鑑証明書や住民票が用意できない点です。
その代わりとして、現地の公証人(Notary Public)に本人のサインを証明してもらう「サイン証明書」などを取得する必要があります。こうした書類は入手までに時間がかかる場合が多いため、早めに準備を開始することが肝心です。
そして重要な点ですが、書類の準備に時間がかかっても、登記申請の期限である2週間は変わりません。 役員の国籍や居住地にかかわらず、期限は一律で適用されます。海外在住の方を役員に迎える際は、特に念入りなスケジュール管理を心がけましょう。
役員変更登記は、会社の状況によって準備する書類や手続きの流れが少しずつ異なります。もし、少しでも手続きに不安を感じたり、「本業に集中したい」と考えたりした場合は、登記の専門家である司法書士に相談するのが最も確実で安心な方法です。
本記事は2025年11月26日時点の情報に基づいて作成されています。税制や法律は改正される可能性があるため、実際の判断にあたっては最新の情報を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。本記事の内容によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。