知的財産は誰のもの?
- 2023/06/30
小さな会社では、特許の発明者に社長が名を連ねていることがしばしばあります。
大きな会社では、特許を取得した技術の発明者に報奨金や補償金などの名目で金銭が支給されることがあります。
中くらいの会社では、この技術はAさんが開発して特許を取得し、会社は相当儲かった、あの技術はBさんが長年取り組んで特許も取得したけれど、コストが高過ぎてほとんど売上にはつながらなかった、などのように、技術とそれに関わった人が密接に結び付いていることがあります。
法律上は、職務の中で完成した発明は職務発明として会社のものになる建前ですが、発明者の気持ちや思い入れを軽視し過ぎるのは、会社にとっても得にはなりません。
(1)発明者の範囲
特許出願をするときに、どこまで開発に関わった人を発明者に含めるかの明確なルールが定まっていない会社も多いかと思います。しかし将来的に特許が大きな利益を会社にもたらした場合には、発明者に多額の金銭が支給される可能性がありますので、不公平が生じないようにする必要があります。客観的なルール化はなかなか難しいですが、退職した従業員が会社を裁判で訴える泥沼のシナリオは誰も望んでいません。
では何か適切に対処する方法はないのか、いくつかの方策をご提案差し上げます。
(2)知的財産権の維持・取得可否の判断主体
特許、意匠や商標の出願をして良いか、出願した特許の審査請求をして良いか、登録された権利の維持年金を支払って良いかといった、知的財産の様々な局面における各種の判断はいわば経営判断の一部です。これらの判断を、事実上、発明者等個人の一存に委ねている会社も少なくありません。
では一体、どのような手順を踏めば組織として経営判断をしたと言えるのか、いくつかの方策をご提案差し上げます。
(3)自分の発明特許なのに出る幕無し?
特許訴訟やライセンスアウトなど、権利の行使や活用の局面で発明者が主役となることは少ないです。例えば、発明者だからといって毎回の訴訟期日に法廷に呼ばれて証言したり、ライセンシーとの契約交渉の場に同席したりすることは稀でしょう。
では、権利行使等の手続を進める知的財産部門は、発明者にコンタクトする必要は全くないでしょうか。既に発明者が退職している場合もありますので必須でないにしても、発明者から有益な知見が得られる場合もありますから、いつでも連絡が取れるような体制を確保しておくに越したことはありません。