パテントプール
- 2023/08/21
ネットなどのニュース記事を見ていると、パテントプールに関するニュースが報道されていることがあります。過去には動画ファイル形式のMPEG、通信規格のLTEやデジタル放送規格のARIB STDなどについてパテントプールが形成されましたが、最近のニュースによれば、コネクテッドカー向けの5G特許についてパテントプールが形成されたようです。
パテントプールとは、平たく言えば、複数特許のライセンスをまとめて受けられる仕組みです。パテントプールがなければ、数多くの特許権者と数多くのライセンス希望者とがそれぞれ個別にライセンス契約を締結しなければならないところ、ある技術についてパテントプールがあれば、ライセンス希望者はパテントプールの利用登録をして所定のライセンス料を支払えば良いことになります。特許権者としても、パテントプールがなければ多数のライセンス希望者を相手に多数のライセンス契約を締結する必要がありますが、保有する特許をパテントプールに登録すれば、個別に契約条件の交渉を行うことなく自動的にライセンス料収入を得ることができます。
但し、パテントプールを形成するための前提として、ライセンス料が高過ぎもせず、低過ぎもしない適正な金額であることなどが必要です。ライセンス料が高過ぎればライセンス希望者が集まりませんし、逆に低すぎれば特許権者がパテントプールに参加してくれないことになりかねません。特許を貸し出す側の特許権者と、特許を借りる側のライセンス希望者とが、当該技術を用いたビジネスを発展させるべく歩み寄れるような条件を見い出すことが肝心です。
ちなみに私は、あまり世の中に知られていない小規模のパテントプールの形成に関与した経験があります。クロスライセンス契約の集合体のような仕組みで、厳密に言えばパテントプールの定義には当てはまらないかもしれませんが、実質的にはパテントプールと同様の機能を果たすものでした。パテントプールの形成が、特許に関わる紛争を、優れた技術の活用促進に転換させる実例を垣間見ることのできる貴重な体験でした。